著者一推しの風雅の書
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この本を著者はこう位置付けている。
曰く、『人間が人間としての人格、人間としての教養。人間としての生活を潤す。孟子の言葉で言うと、「心広体胖」、人間の心を広く体を胖(ゆた)かにする。心身を本当に養う。つまり心の食べ物、心広体胖ならしめる精神・魂の食物であります』。
また、こういった書物を『あれこれ探してみたら一つには「菜根譚」があった。しかしこれはどうも物足りない。そこでふと思ったのが「酔古堂剣掃」です』。
目次も、
第一章:「淡宕」の心境
第二章:風雅の至極
第三章:人間と花鳥風月
第四章:大丈夫の処するところ
第五章:智者の達観
となっており、仕事にどっぷり浸かった生活から一歩離れた生活を思わせる内容となっている。
著者としては、別の著書で仕事における難題を古典に基づき如何に処するかをいろいろ書いているが、本著はそれとバランスを取り、あまり物事に執着してもいけないと説いているのであろう。
二三抜粋しておく。
『嬾には臥すべし、風(はな)つべからず。静には座すべし、思うべからず。悶には対すべし、独なるべからず。労せば酒のむべし、食うべからず。酔えば睡るべし、淫すべからず。』
『静中の楼閣、深春の雨、遠処の簾槞(れんろう)、半夜の灯』
『花は半開を看、酒は微酔を欲す』
心境豊かになる本である。
生活の芸術化
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東洋人が、いかに身の回りの自然や生活用品を象徴化し、自己を哲学的にして芸術的で、美的な空間に位置づけたかが、よくわかる作品です。
老舗の日本料理屋などに行くと、インテリアやそのデザインになつかしさを覚えると同時に、感銘を受けることがあります。ごくごく普通の大衆的なお蕎麦屋さんでさえそのようなことがあります。しかし、懐かしさや、感銘を感じると同時に感じるのは、「もう2度と手に入らない」「すでに失われてしまっている」という感覚です。
この著書を読んでいるとちょうど同じような感覚にとらわれます。
著書で紹介されている東洋思想・東洋哲学に裏打ちされた自然観・生活観は、われわれが生きている世界観よりももっと深くもっと豊かなように感じます。それは、中国大陸という自然環境の厳しい状況や政治的にも生きていくうえで厳しかったであろう世界だからこそ生まれたものだったのでしょう。
では、日ごろ自由な時間が少なく、生活から精神的な豊かさの欠如してきている現代人も、もう一度この生活に密着した美的価値観に立ち戻るべきではないか、と私はそのように感じます。
ストレスが多く生活にゆとりのない人こそ呼んでいただきたいです。
読み応えあり!
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細木!子さんの師匠である、と知り、ミーハーな気持ちでこの本を
手にとりました。内容は難しいですが、同じ文章を2度ほど読むと
理解できます。漢字や言葉の語源、人としての教訓を、丁寧に、
かつ押し付けではない言葉で表現されています。へーという内容が多く、楽しく読めましたが、身を引き締められる一冊でもありました。この方の他の本も読んでみたくなりました。