私が知る限りでは至高の第九
★★★★★
2010年1月8日、オトマール・スウィトナーさんがお亡くなりになりました。私は個人的に、スウィトナーさんの演奏が大好きでした。スウィトナーさんの音楽は、格調高く、歌に満ちているのが特徴でしたが、時に内に秘めた熱いものが溢れ出て、とても情熱的な演奏をすることもありました。N響を指揮した『幻想交響曲』はそのよい例でしょう。金管楽器を激しく鳴らし、曲の持つグロテスクさを余すところなく表現し尽くしていました。その演奏とは対照的な演奏が、この交響曲第9番です。細かな点にまで神経の行き届いた音楽づくりで、スウィトナーさんはオケを完全に掌握しています。巨大建築を思わせる第1楽章、歌に満ちた第3楽章、神の怒りのような激しいファンファーレから始まり、苦悩、幸せへの序章となる美しい調べ、そして人間の可能性を信じるかのようなロマンティックな人間観から生まれた歓喜の歌で締めくくられる第4楽章、この演奏はこの曲の魅力を十二分に表現しています。引き締まってはいるけれど柔らかさを失っていない絹のような弦楽器、木管楽器の音色、クリアーに響き渡る金管楽器、技術的には決してベルリン・フィルやシカゴ響のようなうまさはない。けれども何とも人間くさい、それでいて、世俗的な卑しさは微塵もない。私は、幸運なことに、この曲を自分で演奏する機会を定期的に持つことができるのだけれど、そのたびに新しくCDを参考のために何枚か買う。もう20枚近い「第九」のCDをもっている。マズア指揮ライプツィッヒ・ゲバントハウス管、ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ヴァント指揮北ドイツ放送響、バーンスタイン指揮ウィーン・フィルなど、優れた第九演奏のCDは何枚かある。でも、この、スウィトナーさんの第九にはかなわない。言葉では説明しきれない魅力がこの演奏にはある。「第九」のレパートリーの1枚として、このCDは購入して損のないものだと思います。あの「長い指揮棒」を無骨にふって、まるでその指揮棒が編み物の棒のように音楽が紡ぎ出されていく瞬間を、このCDを聴いて体感していただきたい。
それにしても、本当に名指揮者といえる指揮者がどんどんお亡くなりになる。時の流れというものは残酷だ。スウィトナーさんの偉業に敬意と感謝を示しつつ、ご冥福をお祈りしたい。 合掌
第九の決定盤をお探しの方にその候補として
★★★★★
他の方もレビューで書かれていますが、独唱・合唱ともに素晴らしく私の知る限りでは最高の部類。
この曲の評価基準を(優先的に)合唱の良し悪しに置いている方にとっては嬉しい一枚となるでしょう。
もっとも第4楽章以外も負けてはおりません。それぞれとても良い演奏であり、小さくまとまっておらず、
ベートーヴェンの演奏に求める力強さを派手になり過ぎない程度に持ち合わせています。
その力強さとは打って変わって第3楽章では美しい音色が心地良く響き飽きさせることがありません。
緩急をつけるためとは言えゆったりし過ぎると感じていた第3楽章でしたが、この演奏はそうでもないです。
そして第4楽章、合唱が待っています。・・・・・・圧倒。
気になる音質の方も申し分無しで音の広がりも良好。弦楽器の音が鋭いのが印象的です。
(合唱部分ではもはや不可避とも言えるノイズ有。致命傷にはなってませんのでご安心を)
以上、べた褒めしている通り私自身とても好きな一枚です。
きっとどなたかの愛聴盤にもなってくれると思いますのでぜひ。安いですしね。
第1楽章(16:10) 第2楽章(12:47) 第3楽章(16:57) 第4楽章(25:04)
録音:1982年 ベルリン、イエス・キリスト教会
いい!
★★★★☆
これは値段で勘違いされるCDだなあ。
本当にクラシックって値段と内容が比例しないことが多いのです。この演奏は日本人には馴染みの薄い組み合わせですがおそらく目から鱗が落ちます。ブランドだけでCD選んでは大事なものを聞き逃してしまうということで。
ベルリンシュターツカペレのおとが透明で高音がホントにきれいに伸びる上に、低音はしっかりず〜んとくる。演奏と録音がここまでマッチする第九もそんなに多くないのではと思います。
もう7,80枚の第九聞いていますが、上位に並べたい演奏です。ぜひ聞いてみてくださいね。
初めて購入した思い出のCD!
★★★★★
1980年代前半、巷にCDプレイヤーが出始めた頃に、初めて購入したCDの一枚。CDプレイヤーを購入したのが年末近くだった事もあり、初めてCDを聴くなら「第九」と決めていた。当時はCDの種類も多く無く、「第九」はスウィトナーの演奏が録音も新しく演奏の評価も高かったので購入することにした。購入した時は鏡の様なCDの美しさに見入ってばかりいたが(今となっては珍しくもないが‥笑)演奏の方は、当時の最新技術のCD、そして最新のデジタル録音であるにもかかわらず、スウィトナーの演奏は伝統的で正統派のベートーヴェンを聴かせてくれた!最新の再生機と録音で、全く逆な伝統的で古風なベートーヴェンを聴けたと言うわけだ…。しかし古風と言っても、これは悪い意味では決してなくスウィトナーの円熟した(当時60歳!)素晴らしい名演奏だ!SKBの弦楽器の美しさ、奥行きのある深い響きの合唱の素晴らしさ! 現在聴いても、最高の「第九」の録音だろう!(同じSKBを振った最新録音のバレンボイム盤よりこちらの演奏の方が指揮、オケ、合唱団全てが上だ!) スウィトナーは残念なことに指揮活動から引退してしまったが、彼の録音はいつまでもクラシックファンに愛されていくでしょう!
合唱が最高レベル
★★★★★
この低価格とは思えないほどの隠れた名盤だと思います。とにかく合唱がすすばらしいです。合唱のすばらしいものとしてはアバド、ベルリンのスウェーデンの合唱のCDがあげられますが、その他、総合的に行ってもこちらの方がすばらしいと思います。20枚以上の第9を聞いていますが、多く聞くことの多いアルバムのひとつ。特に、フリッチャイ、ハンスシュミットにならび、癖がなくかつ名演奏なので初めての方にもお勧め。