アルバム自体は散漫な出来ですが、6〜8曲目は極上の大人のラブソング。クリスマスに是非。
★★★★☆
パワーステーションのボーカルとしてアメリカでブレイク、その後アルバム『リップタイド』からの「恋におぼれて」で全米一位を獲得した彼が、『リップタイド』の次に発表したアルバム。ここからは1曲目が全米でトップ5入り、5曲目もトップ40入りするがアルバムの核となっているのはむしろUKでトップ10入りした7曲目だろう。それ以外では3曲目と10曲目も一応シングルカットされた(ヒットはしなかったが)。
ただ、アルバム自体は『リップタイド』と比較するとやや散漫な印象。この人の好きな様々な要素(ヘビメタ、ファンク、ボサノバ、レゲエ、アフリカ音楽からヨーデルまで)をゴッタ煮にしたようなサウンドは、一見似たようなことをやっているSTINGの音楽とは大違い。「洗練された」とか「ハイブリッド」とかいう形容がおよそ似つかわしくないそのアプローチは、例えるならガンダムの頭にマジンガーZの胴体とエヴァンゲリオンの手足をくっつけたみたいな感じ。実際A面の流れは正にその結果の食い合わせの悪さが堪能できる。
しかしこの人の真骨頂はB面の6〜8曲目にこそある。「大人のラブソング」などと言うとひどく月並みなAORを想像してしまうが、ここでの歌い手の体温まで伝わってくるような歌唱は、全盛期のブライアン・フェリーやジョージ・マイケルにも引けを取らない。特に翳りを帯びたボサノバ調の8曲目が素晴らしい。いけないことと知りながら官能の波に身を委ねてしまう、みたいな感覚を非常にうまく表現している。
冷静に考えれば10曲中3曲もカバーを収録(5・6・10)しており、そのうち6以外は必ずしも出来がいいとは言えないことからして、結構締め切りに追われて作ったんじゃないかとも思う。でも、毎年クリスマスになるとこのアルバムの6・7曲目が聴きたくなるのも確か。ジャケ写のイメージもシンプルだがこれぞロバート・パーマーという感じ。全く、惜しい人を亡くしたもんだ。合掌。
迫力のあるブルーアイドソウルが魅力
★★★★★
この人はニューオーリンズの音楽に憧れている。だからいろんな音楽の要素がこのアルバムの中には詰め込まれている。そういう謎解きをしながら聴くのもいい。豊潤でソウルフルな音楽を志向していた時期の彼のダイナミックなアルバムの一つ。ハイパーアクティブなファンクサウンドがすばらしい。10点中10点。
ヘビメタとボサノバの融合のゆくえ
★★★★☆
リップタイドにつらなる路線ですが、今回は「へヴィーメタルとボサノバを融合させた」作品です。一曲目「この愛にすべてを」はこれまでのヒット曲と原則的には同じ路線ですが、パーマーさんのツインボーカル(彼は2つの旋律を同時にうたうことができるそうです)を楽しめます。7番のシーメイクスマイデイなどはパーマーさん会心のラブバラード。うたい方など好きです。ただ、ヘビメタとボサノバがどのへんまで融合できたかはちょっと怪しいものですが、「同じアルバム内に仲良くならんでいる」といったかんじでしょうか。