大躍進の年だった2003年を総括するような、坂本真綾のオリジナル4thアルバム。これまでのアルバム同様に全トラックの作曲・アレンジ、プロデュースを担当している菅野よう子は“引き出しの多い人”として知られているけれど、そんな彼女が提示するどんな音世界でもあっさりと自分のものにしてしまうのはやっぱり“演じる人”ならでは。今までのアルバムと比べると、どきりとするほどに“女”を感じさせる瞬間が多くなったようにも思えるが、性を超越した神々しさを漂わせるスケール感のほうがむしろ印象的。(剛吉若寸也)
「もがいている・煮詰まっている」感が実にロック。でも、個人的には「真昼が雪」を聴くと頭の中が色んな思いでいっぱいになる。
★★★★☆
皆さん書かれている通り、このアルバムから一曲選ぶとしたらやはり「うちゅうひこうしのうた」だと思う(で実際ベスト盤『everywhere』に収録されてしまったしw)。
アルバム全体から伝わってくる「煮詰まった感じ・もがいている感じ」が「ロックだなあ」と。これは『Lucy』が洋楽志向の日本語の「Pops」として本当によく出来ていたのとは全く別の意味で。当時の坂本真綾がミュージカル『レ・ミゼラブル』に挑戦して大きな壁にぶつかっていたというのを聞いて「なるほどなあ」と思ったりもしたのだが。自分は『かぜよみ』から遡る形で他のアルバムと並列でこの作品を聴いたのだが、リアルタイムでこの作品を聴いたファンにとってはかなりスリリングだったのではないだろうか。「あ、ちょっとヤバいな…」みたいな。
でも、自分にとってこのアルバムは『真昼が雪』一曲のための作品なのである。この曲は本人さんの作詞ではないのだが、その事が逆に息の詰まるような構成のこのアルバムの中の束の間のオアシス的な位置づけに貢献していると思う。
つい二ヶ月程前に久しぶりに故郷の京都に帰って、下鴨神社から母校である京大まで歩いている時にiPodでかかったのが『真昼が雪』だった。「もう別れて随分経つ恋人のことを思い出すと今でも胸が痛い、けどそろそろ思い出にさよならを告げなくちゃ」みたいな歌詞なのだが、ちょうど前日に降った雪がまだ溶けずに道端に積もっているのを見ながら、思わず学生時代に付き合っていた二才年下の彼女のことを考えてしまっていた。私が神戸に引っ越して一年後にあっさりフラレてしまったのだが、それでもあの大学にいる間は結局ずっと彼女と付かず離れずだったんだよなあ、とか。
それから数日してからである。坂本真綾が4月から始まる『四畳半神話体系』で、ヒロインの明石さんのCVを務めると知ったのは。作品の舞台は京大、主人公の二回下で憬れのマドンナ的存在のキャラの声を坂本真綾がアテることになるとは…。
ちなみに、その京大時代の彼女は綾波レイに似ていた。真希波マリではなく。得てしてそういうもんだwww
坂本真綾と菅野よう子の見事なコラボ
★★★★★
遊びのような曲、激しい曲、切ない曲、結構な難曲、、。菅野よう子が自由奔放書き綴る曲を見事に歌いこなす坂本真綾の実力がよく分かるいいアルバムだと思う。
マクロスF、スペースバイオチャージ、シートベルツ公演と平成20年から21年にかけてこの二人のコラボが多かったので引っ張り出して改めて聴き直し、惚れ直した次第。
やっぱり時代を超えて違いの力を引き出す超時空ペアだったのだと実感する。
声も詩も曲も素晴らしい!
★★★★★
澄んだきれいな声、そして独特の世界観のある曲と詩。
たまたま車の中で聞くCDが欲しくて購入したところ、その世界に惹き込まれました。
一曲ずつが似ていない、というのも特徴だと思います。
聞いていると涼しくて優しい気持ちになれます。
自分の中では最高な作品でした
★★★★★
昔持ってたCDに汚れがついてしまい、聞けなくなったためもう一枚買うつもりでこのページにたどり着きましたが、
ついでに皆さんのレビューを見ていたら、まさか賛否両論な結果になるとは思いませんでした(笑)
なので、私も私の意見を書こうと思います。
確かに前3作みたいに、いろんな面の真綾さん(というよりいろんな菅野さんのほうが正しいではないかと思いますが)を堪能できないかもしれないのですが、
少年アリスは3作より優れた部分もあります。
それは、全体的な結束感は3作より強いところだと私は感じました。
ちゃんとテーマがあり、且つ曲風でもある程度で纏まっていたため、
パーツパーツで聞くと、最初はちょっと聞きづらいかもしれないのですが(昔の作品とちょっと変わったとこがあるが原因かもしれません。私も最初はダメでしたw)、2度目3度目になると段々筋が見えてくるはずです。
確かに一つのアルバムの中だったら、必ず好き嫌いがあると思いますが、一度飛ばさないで、最初から最後まで聞いてみたら、きっとこのアルバムを好きになれるはずだと思います。
ですから、私はやはりこのアルバムに星5つをあげます。
緻密な音で、散漫なプロデュースで・・・。
★★★★★
菅野よう子プロデュースとしては最後となる4th。鉄壁だった二人のチームワークにすでに軋みが生じていることを痛切に感じさせる一枚だ。
本作制作時に坂本がスランプ状態に陥っていたのは後に知られるところだが、その影響からか自作詞も歌声も、思い詰めたような雰囲気を感じさせるものが多い。そんな重苦しさと手詰まり感のある坂本の内的イメージに拮抗するように過剰に飾り立てたアンサンブルに、チグハグ感がつきまとうのだ。
アルバムタイトルからして寓意的でおぼろな世界観を志向したのだろう。それを反映するように、緻密に組み上げられたアンサンブルの中で坂本のボーカルを単なる音として響かせる菅野の手法は、これまで以上に徹底されている(M-1、M-6、M-7)。しかしその合間々々に観念的なメッセージが登場しては、そのたびに聞き手はメルヘンの世界から坂本の私的領域に引き戻される。両者のコントラストが際立つほど坂本と菅野の齟齬が強調されて、後に残るのは未消化のモヤモヤ感。M-14が坂本のその後を仄めかしている。