殺人現場における昆虫学者の基本的な仕事は、採取された昆虫の様子から、死後経過時間を決定することにある。しかし昆虫は、死んでから後に遺体を動かされたかどうかを知る重要な手がかりを与えることもある。また、生息場所が特徴的な昆虫が採取されると、犯行現場も推定できる。こういった調査の一部始終が非常に詳しく描かれているため、腐乱死体や、そこに群がるウジの様子など、文章から鮮明な絵を想像してしまい苦しめられることにもなりかねない。ただし、あちこちにちりばめられたユーモアあふれる表現やジョークが、陰うつになりがちな文章の救いになっているのも確かだ。
犯罪に対する法医昆虫学の威力と、この学問誕生の経緯が本書のおもしろさである。特に、まるで推理小説の謎解きのように鮮やかな法医昆虫学者の証言は、新しいミステリージャンルの出現を思わせるような驚きがある。だが本書は、現実の殺人事件にのっとったノンフィクションであり、ミステリーではない。ユーモアに包まれた言葉からは、学者としての高揚感より、犯罪に対するやりきれない思いが伝わってくる。(朝倉真弓)
日本では現在法医歯科学、法医中毒学などは学問として確立されていますが、法医昆虫学はほとんど扱われていません。
この本は体験記風な感じで話が進みますが、著者が昆虫学者から法医昆虫学者になるまでの実験なども紹介されています。
気持ち悪くなく、一般の人向けの内容なので楽しめると思います。
この本を読んで上に書いた聖書の言葉が思い出された。
日本語で言うなら「天網恢恢疎にして漏らさず」ということか。
どんな言語でも「ウジ」とか「ハエ」
というと汚い物、軽蔑されるものの代名詞である。
が、本書はそういった虫たちを手がかりに
死者の真実を追う人間のドラマである。
たしかに本書はテーマの独自性とその面白さを
構成や著者の筆致がうまく生かしきれていないことは認める。
それにしても「こんな世界があるんだ」「悪いことはできないんだ」
ということに気付かせるだけでも十分読む価値はあると思う。
時として自分の仕事から自分の感情を切り離せないことがある
こと(たとえば、幼い犠牲者が自分の娘と同じ服と靴を
身につけているのを見たとき、帰ってから
娘に新しい服と靴を与えようと決めたことなど)
を率直に告白する著者の姿には
誰しも共感を覚えるのではないだろうか。
日本人に読み易いように、考えて邦訳して欲しいと切に思う
Good book!!