当事者の視点
★★★★☆
当事者の視点で書かれている。一気に読まされるものがある。当事者とはこういうものなのか。自分が本当は病気だったとしても、この本を読んでもなお自分が病気だとは認めがたいのかなと思った。それくらい、本人にとっては、世界が合理的に解釈されていくのだ。
しかし、本書でもっと病気のことを知ってほしいという呼びかけには、複雑な気持ちがした。というのも、やはりどう位置づければよいのか、というところは難しい。
統合失調症の内面
★★★★★
この本は統合失調症の患者が自身の青年期以降の妄想や幻覚に満たされた生活をつづったもので、大変興味深く一揆に読みきってしまいました。他者から見れば明らかに不合理な妄想がなぜ患者には確信されているのか、おかしいとは思わないのかとか、患者はどう考えてるのか、こうだとは考えないのだろうかとか、よく疑問に思う点もこの本を読めばある程度合点がいくと思います。
しばしば、脳に関する疾患の患者の内側からの洞察というのは、脳科学においても貴重なものであり、この本も、外側からでは理解しがたい統合失調症の患者の突飛な言動、考えや不可解な症状がいかにして作られるか、テキストでは羅列されるだけの症状にどういう関連があるか、このような症状をもっている患者の内面はどんな感じなのかなどという点で理解がとても深まると思います。
また、統合失調症特有の滑稽な言動、妄想あるいはそれに似せた悪ふざけを著者自身少しユーモラスに振り返っているところもあり(ある程度よくなったからこそでしょうが)、深刻な描写の中にも少し息抜きがあります。
ただ、著者の「このような本があれば、病初期の患者が病識をもってすぐに診療を受けることができるのではないか」という願いが、数字とデータの山の中から規則を見出し、世界の秘密をつかんだと確信してる者に通じるのがなかなか難しいことは統合失調症関連の本を読みあさり、まわりからも統合失調症だと長いこと指摘され続け、それでも自分がこの疾患だとは信じなかった著者なればこそよくわかるのではないかと思いました。
精神障害者が理解できる
★★★★☆
この脳の病気は強烈な被害妄想を症状とするため、人とは付き合い難くなり、本人は孤立する。
庭から聞こえてくる他人の声、「お前を監視している」とメッセージを送り続ける街灯やナンバー・プレート。
常に警戒しなければならず、何も信じられず、心は休まらない。
精神障害者のアイデンティティを病気であらわれる症状と同視しがちであるけれど、この本を読むと病気の脅威に
一人打ちのめされ、隅に追い込まれて苦しんでいる普通の青年がいるのがわかります。
ホームページに寄せられる他の患者の例や、彼のすぐれた芸術作品がふんだんに入っていて、闘病記にありがちな重くるしさはありません。
しっかりした「本人」がその病気について語ってくれる貴重な作品です。
この本に出会えてよかった
★★★★★
私は、ここまでありありと患者の本音が分かる本に出会えたのは初めてです。
著者は、統合失調症がよくはなっているが治癒はしていない、と言っています。この本には統合失調症の様々な症状、そして病気が良くなっていく過程が素直に描かれています。私は読み進めていくうちに涙が出てきました。
統合失調症の人の家族の方々はもちろん、患者本人にもぜひ読んでもらいたい本です。そしてこの病気について知らない人たちにもお勧めの本です。
この本を読んで、精神障害者と呼ばれる者たちがいかに孤独で、彼らは混沌とした社会による被害者でもあるのではないか、ということを考えさせられました。