「百花繚乱」の江戸思想
★★★★★
ともすれば江戸時代というのは守旧的、閉鎖的なイメージがつきまといがちだが、そんなことはなく、むしろ多様な思想が花開いた豊穣な時代であり、その後の近代化を可能としたものであることを明らかにした一冊である。
問題意識や文体は現代的、明瞭で読みやすい。
まず、「会読」という手段を通して学習・議論の方法が確立し、また蘭学の展開、発生により、ヨーロッパに遅れることなく合理的な思想が成立する。(むしろ当時の日本ほどヨーロッパに追いついて最新の文化を取り入れた国はない)
江戸前期の「徳川の平和」が崩れていく中で、蘭学、朱子学、国学が交錯し、独自の思想世界が展開する経緯が鮮やかに描き出され、そこにはフェミニズム、ナショナリズムの先駆を見出すことも可能である。その流れ・構想が大変明示的に示される一冊である。
なぜ日本は西洋以外で唯一近代化に成功したか考える上で刺激的な知見があふれている。