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近代による超克〈上〉―戦間期日本の歴史・文化・共同体

価格: ¥3,885
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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日本戦間思想とは何か ★★★★★
戦間期(1920年代〜1940年代前半)の日本思想史を、新しい角度から読み直した傑作。日本史上かつてない資本主義がもたらした「文化生活」という夢のような消費社会に直面したとき、日本の知識人たちはこれに対応するどのような思想=言説を生み出したのか、その諸相が問われる。
本書で取り上げられる思想家たちは、おおよそ二種類の言説を、それぞれどちらか一方を強調するかたちで構築していった。ひとつは、都市の無数の商品で埋め尽くされたスピーディーな生活のなか、ふつうの人々はいかなる「日常」を経験しているのか、それを批判的に理解し思考しようとする未来志向の思想。もうひとつは、その目まぐるしい都市生活になかば背を向けるかたちで、日本人のより深層的な部分に根づよく生きている習慣や倫理や美意識を、再興しようとして奮闘した過去志向の言説、である。両者ともに斬新な日本思想の方法と内容を提示したが、それがやがてファシズムに親和的な思念へと変貌していってしまった、その不幸な帰結の意味がくり返し問題化されている。
このうち、前者の代表が戸坂潤で、著者は、戸坂が「現在」を表面的な批評ではなく哲学的に認識しマルクス主義の立場から批判しようとした姿勢を高く評価しているように読み取れた。後者に関しては、柳田國男の民俗学や和辻哲郎の哲学などが主に言及される。こちらは、農村社会や古来の日本文化を尊ぶ「反動的」な思想の持ち主であるが、それが前者のような都市生活を肯定的にみつめる思想と時代的に呼応し表裏をなすものであったことが、よくわかるような説明を著者は行なっている。
他に、この上巻では、モダンライフの経験に対する反省としての重要なテクストである「近代の超克」の座談会に改めてスポットライトがあてられ、また今和次郎らの「民間学」の現在哲学史的な意義が再検討されるなど、題材が豊富で誠に楽しい思想的読書ができた。2000年に原著が出版された本書を、訳者はじっくりと日本語として再編成していったようだが、原著者の多義的なレトリックが光るからか所々にかなり難解な文章もありながらも、全体としては非常に読みやすい出来となっている。上下巻を読み通すのは疲れるが、必ずや心地よい疲労感をもたらしてくれるだろう。