人気作『グレイ・ゾーン』の関連作品。本書では少し時間をさかのぼり、前作では明るい印象が強かった由利の抱えている過去が明かされて行く。由利以外にもロシア人の血をひく灰色の瞳の片岡亜久利をはじめ、ファンにはおなじみのキャラクターたちが多数登場する。イラストは、名コンビである蓮川愛の手によるもの。
刑事事件を軸にふたりの男たちの交わす愛が描かれる物語そのものは、ドラマチックではあるが、シンプルでわかりやすい。だが登場人物たちがふと心情を吐露する場面に時折顔を出す、著者自身の人生観のようなものがキャラクターに陰影をつけ、本書を味わい深いものにしている。
驚くほど多彩な形容詞を多用しながら、男たちの容姿にはじまり、状況、行動のひとつひとつ、またその行動に至った理由、心の動きまで、著者はすべてを逃さずに濃密に描いていく。深夜のバーで、甘い妄想が由利の口から真行寺の耳に注ぎこまれていくくだりの、たたみかけるような表現は特に見事。ベッドシーンよりも艶(なまめ)かしい雰囲気を一瞬にして作り上げている。(門倉紫麻)
シリアスな事件も組み込まれているんですけど、由利さん独特の雰囲気のせいか、それほど重たい気分にはなりません(笑)。
ちなみに、この方の書くものは、とても『男同士』という雰囲気がします。なにげないシーンでも、読んでてドキドキするのはそのせいかな?
『グレイ・ゾーン』の主要登場人物の一人、由利潤一郎さんのラブストーリーです。
長身の美形、切れる頭脳、育ちのよさそうな柔らかい物腰、ユーモアとウイットに富み、それでいて誰もが唖然とするキレたファッションセンスの持ち主・由利潤一郎氏が、真行寺佳也にひかれ、時折普段のマイペースを保てなくなって零れ出てしまう所々の感情表現が魅力的でした。
蓮川愛さんのイラストも、相変わらず素敵。
ただ、本のページ数に比して、少しばかりイラスト数が足りない感じがするのが残念でした(T_T)
もっと見たかった・・・。