本能寺の真相など、当時でも誰にもわからなかったのだから、400年も経った今に解明されるわけがない
そんなことよりも、当時の安土城やその城下町がどんな様子だったのかがCGで再現されており、今まで見て来た本の中では一番わかりやすく、凡そこんな風だったのだなと想像力を掻き立てられる
勿論、それが正しい当時の風景ではないことぐらい誰にでもわかることだが、寧ろ「安土城とその城下町、武家屋敷はどんな風に並んでいたのか」と言うのを簡単に見せてくれる点では秀逸
ただし前述の通り誰にもわからない本能寺の変の真相を探ろうとするのは愚の骨頂
探究心は評価できるが、「言い切る」ことも「決め付ける」こともできない以上、CG再現にのみ的を絞ればもっと良かったと思います
文章よりもCGに一見の価値あり

安土城やその天守の雄姿、天正時代の京の町並み及び本能寺・妙覚寺・二条新御所・南蛮寺の位置関係、本能寺内の建物の配置や光秀軍の本能寺包囲と戦いの様子、山崎の合戦、勝龍寺城、安土城炎上、坂本城落城までをＣＧを使ってヴィジュアルに再現している。本能寺の変前後の激動は日本史のハイライトの１つなので、私は様々な本を読むが、どうも文章や平面的な地図だけではわかりにくいことが多い。その点、この本は視覚的に一連の出来事を理解するのに役立つ優れもの。山崎合戦図屏風や上杉本洛中洛外図屏風から本能寺近辺を切り出す等、当時の絵図も載せ、さらに現在の本能寺跡や安土城址もアクセス方法を含め紹介する等、親切だ。当時の京の人家の少なさにはびっくりする。

本書にはＣＧ等の絵図だけでなく、一連の事件の流れを解説する文章がついているが、そちらの方は今は否定されている説が所々散見されるので、注意した方がよいだろう。嘘っぽい逸話はその旨ことわる等、配慮はしている。しかし、例えば最大の謎・光秀謀反の理由については朝廷・公家黒幕説が「最も信ぴょう性がある」と記しているし、有名な信長の「是非に及ばず」を信長の死の覚悟と解釈している。また、筒井順慶が洞ヶ峠を決め込んだと述べている。それらは否定説が現在は有力だ。ただし、合戦の様子の再現等は最近の研究結果に照らしてもおかしな点はない。また愛宕百韻は光秀の決意表明とする比較的最近の説を否定するのは私も同意見だ。もっとも本能寺の変〜山崎の合戦は諸説紛々の日本史最大級の謎だから、本書の説明も参考にしつつ、信長は謀略で殺されたのか―本能寺の変・謀略説を嗤う や戦国時代の大誤解を読むことを勧める。というか、これらの本を読むときに空間的なイメージを掴むのに適しているのが本書である。