チャイナ服を着た細野さんのグローバル的音楽
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YMOを立ち上げる前の細野さんの試行錯誤の姿が聴ける作品だ。
ボサノバ、ルンバ、沖縄民謡、ラップ・ミュージックの原石とも言える”フジヤマ・ママ”(ちなみにBGMでラップ現象という楽曲で実験的挑戦をしている)、リズムボックスを主体にガムランの音を重ねた”シャンバラ通信”、レゲエ、なんでもありのまさに東京ラッシュ状態。
細野さんは日本語のロックの確立に真剣に取り組んだ”はっぴいえんど”の元メンバー。このころからの大胆な音楽作りがこの後のYMOへとつながる。まだユキヒロさんは加わっていないが教授とともに一定の方向性を模索し始めた初期の作品。
教授との音楽的感覚を共有したエピソードがThe end of asiaのサビのフレーズ。ほぼ同時期に作曲したというから驚きだ。
細野晴臣のポスト*パラダイス世界
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俗に言うトロピカル3部作の中ではこのアルバムが一番好きです。
当時流行していたARP ODYSSEYやCS-80等のアナログシンセの利用、
YMO一派の人達の演奏の巧さもあり、多少フュージョンっぽいサウンドなんですがフュージョンでもない、かといって前作「泰安洋行」のようなドップリトロピカルでもない、地に足がついてるんだか、思想の中に浮遊してるんだか何だかよくわからない、危うく、捉えどころのないチャンキー・ホソノ・ワールドです。
堅苦しい(東洋)思想や宗教、哲学にディープに入り込んではいるのだけれどある部分ではチープ。こういった世界にありがちな排他的スノビズムを感じさせない、ユーモアに溢れた、すっきりとした優しい気持ちになれるアルバム。
特筆すべきはリズム。レゲエ、セカンドライン・ビート、ファンク、ルンバ、フュージョン、、、
自称「アフリカ人の血が混ざっている」細野さんのビート感覚が納豆のような独特の粘りと醤油味を醸し出しています。^^
四面道歌、フジヤマ・ママ、ファム・ファタール、ウォリービーズ、はらいそ、私は大好きです。
細野さんの音楽を聴いていてよく感じることは「ここではない何処かにいきたい」思想が
根底にあるということで、そこがある種の人達を退かせる一因ではあるのですが、このアルバムにはそういった拒否反応を凌駕する、不思議な説得力があると思います。
それはたぶん、日本人として生きる私たちの心の根底に流れる懐かしさとも言うべき「ある琴線」に触れているからだと個人的には考えています。
こんなにも心地よい邦楽アルバムがかつてあっただろうか?
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”はらいそ”とは、ポルトガル語でパラダイスのことだそうな。なんといってもYMO結成のきっかけともなった3人の顔会わせである。今聴くとアナログシンセの音がやけに心地よい。細野さんのアルバムのうちで一番好きなアルバムがこれです。私的には、テクノ以前の細野さんが大好きです。また、最近ティンパンで原点回帰してるみたいですけど。タイトル曲は名曲!トラディショナルの安里屋ユンタも低音の細野節が絶好調です。くせになります。ポカポカと足下から暖まる感じ!人生に迷っているときに効きますよ、これは。
脱帽・・・・
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「泰安洋行」にもひっくり返ったが、これも凄いねぇ。当時よくこのような「趣旨」のアルバムを作らせてもらえましたねぇ?いやいや参った。この歳になって今更彼の昔の音を聴くなんて恥ずかしいのですが、聴かないで済ませてしまうほうがもっと恥ずかしいことですね。音楽好きな日本人なら聴くべき音でしょうね。万華鏡のような音の洪水。あっという間の世界一周。・・・・例えの形容が出来ない。
蜃気楼 はらいそ
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1977年頃の細野晴臣は、それはもう怖かった。
なにがというと、そのルックスがである。前歯は真っ黒、目はギョロギョロ、やせ細り髪はぼさぼさ。
おんなじ時期のストーンズのキースリチャーズ(ほとんど廃人)と、見まごうばかりの不気味さである。
そして、その音楽ときたら、、。
イエローマジックオーケストラのデビュウ当時、中学生だった僕は、友達の部屋でこのアルバムを拝聴した。
友人の兄所有のもので、「これが彼らの元となったアルバムだよ、」との解説付きでした。
僕は、このアルバムの異様さに口をあんぐり。まさに「ドン引き」した。
なにこれ!東京ラッシュ?インドネシア人が「ナニアノネ」と歌い、沖縄?フジヤマママ?おっ!YMOだ、なんか鐘が鳴ってる、えっ?なに?モアベターよ?えっ?終わり?
、、、。想像を超えた音楽に、冗談抜きで震えあがったものである。
そんな僕が、その後時を経て、細野氏のソロワークを集めるなぞ思いもしなかった。
僕のもっているのは、88年のCD化再発のもの。
10年以上たって、僕はこのアルバムの魔力にとりつかれたのである。
最近、僕は知り合いになった音楽好きの若い人たちに、このアルバムを盛んに勧めるが、その反応は、一様に「いいねこれ!」である。
軽自動車の1BOXで、ばかでかい音で聞く奴や、ほとんど毎日のように聞き、(うちの息子のように)いっしょにハミングする中毒症状を表す者も出てきた。
30年を経てもひとつも色あせない。それどころか、常に新しい発見があり、新規のファンをどんどん取り込む。
このようなアルバムが、日本のポップシーンで存在することを、私はとても誇りに思うし、ほとんど奇跡だと思っている。
(リマスター盤ほしいな、、、。)