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ウィッチフォード毒殺事件 (晶文社ミステリ)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 晶文社
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《ロジャー・シェリンガム》シリーズの第二作 ★★★★★

1889年にリヴァプールで発生した「フローレンス・
メイブリック事件」を下敷きにして描かれた本作。

毒殺という手段、そして全ての関係者に、大なり小なり犯行動機があり、同時に
犯行の機会もあったという設定は、後年の傑作『毒入りチョコレート事件』を彷彿
とさせ、事実シェリンガムたちが作中で行う議論は、『毒入りチョコレート事件』で
完成された《多重解決》の萌芽を窺わせるものとなっています。

調査が進むのと並行して、シェリンガムたちは様々な仮説を組み立てては崩すという
試行錯誤をしていくのですが、終盤になって導き出される、もっとも不穏で戦慄すべき
仮説の後に、いい意味で読者を脱力させる真相を提示してみせるのが、バークリーの
真骨頂でしょう。


また、前作から引き続きシェリンガムの相棒を務めるアレックと、その姪である
シーラの二人が、シェリンガムに協力し、事件の捜査をしていくのですが、彼ら
三人の会話が実に楽しげで、派手な展開のない本作を全く退屈させられること
なく読ませてくれます。その話芸は、ユーモア作家として出発したバークリーの
面目躍如と言えるのではないでしょうか。




タラシのロジャー ★★★★☆
ロジャーシリーズの特徴は、ミステリーの固定観念からの脱却と実践で、前作「レイトンコートの謎」では、読者に公正なプロットで、故意に隠された秘密というものが存在しない、鋭い人ならほんの数ページで犯人がわかってしまうというものでした。
探偵役のロジャーの思い込みバリバリの捜査に大いに笑わされ、一緒に思い悩むというストーリィに乗せられ、非常に面白い作品であります。
今回の「ウィッチフォード毒殺事件」では、証拠重視の捜査からはなれ、関係者の心理から事件に迫ろうという試みがなされています。
毒殺する心理とは?
殺害の動機とは?
関係者はいったいどんな人物なのか?
聞き込みをすればするほど、動悸のある人物ばかりになり、仮説は次から次へと立てられます。
これも、真実はひとつしかないというようなミステリーに挑戦状をたたきつけているわけですね。
本作品の読みどころは、以上のようなところにあるんですが、それ以上に、たっぷり詰め込まれたイギリス的なユーモアと、自意識過剰でおしゃべり好きで女たらしのロジャーをはじめ、登場人物たちが実にいきいきと描かれているところが大きな魅力となっています。
特に、ロジャーとアレックとアレックのいとこの娘シーラとでのウィットに富んだ会話は、読んでいてとても楽しかったです。
この結末はあり? ★★★★☆
「謎を解決しない」名探偵で夙に有名な、シェリンガム物の第二弾に当たる作品。前作からワトスン役を務めるアレックとお転婆娘シーラと三人で夫を毒殺した容疑をかけられている若い妻の無実を晴らすため奔走するが・・・

三人のどたばたぶりはバークリーの他の作品と比較しても常軌を逸している程。人間心理に対する異常な興味から思惑と違う方向に物事が進んではちゃめちゃです。
しかし、正直言って事件を解決しているのですが、いくら何でもこんな解決の仕方では誰も納得しないでしょう