ザ・フーのナンバーは美しく痛快で、ときにはモハメド・アリのパンチのように強烈で馬鹿げたポップソングだった。そうした偉大な数々のナンバーは、下手なベスト盤やひどいパッケージングのために、これまで割を食ってきた。けれども、このスリリングな、まぎれもなくクラシック・ロック屈指のバンドはついに2枚組の本作で、全キャリアを見わたす入門編的なコンピレーション盤を手にした。収録曲のほとんどの選曲に頭を悩ます必要はない。たとえ「My Generation」「I Can See for Miles」「Baba O'Riley」などの大ヒット曲がなくても、「Boris the Spider」「Pure and Easy」「Squeeze Box」といった長年のファンに人気のナンバーを選べばいいのだから。もちろん選曲者としては、『Tommy』からもっと色々なナンバーを、さらに、異論もあろうが最高の(そして間違いなく最もいかれた)『The Who Sell Out』から1曲でなく他にも入れたかったことだろう。だが、やはり本作はファン向け(バンドの音源をすべて集めようとするマニアックなファンは除く)というよりも、初心者にぴったりのコンピレーション盤なのだ。(Mike McGonigal, Amazon.com)