さらにパワーアップ!
★★★★★
“音を見る”共感覚(キョウカンカク)美少女探偵・音宮美夜の第2弾。共感覚とは、文字に色が見えたり、音に匂いを感じたりするという特殊な知覚現象。音宮美夜の場合は、音に対して聴覚と一緒に視覚が反応するという共感覚の持ち主だ。音を聞くと、形や色が見える。
デビュー作である「キョウカンカク」では、この音宮美夜の特殊能力が全面的に押し出されて、事件の真相が明らかにされるが、今回はこの共感覚が、超能力的な力ではなく、特殊体質的な扱いにトーンダウンされている。探偵役があまりに超常的な力を有すると、安易に犯人にたどり着いてしまう……、この弱点を二作目では見事に克服、本格推理小説としての謎解きの難易度(面白さ)がパワーアップしている。
特殊能力を有するということは、普通ではないということ。異端の刻印は、子供の無垢な心には残酷過ぎる。その苦しみ、悲しみを織り込むことによって、物語がより重層的に、深みのある色合いに染まっている。容疑者や敵役もパワーアップ、元エリート警察官僚の老人と敵対した音宮美夜は、警察組織に裏切られることになるが……、探偵としての推察力、洞察力を存分に発揮して窮地を脱出、そして、伝家の宝刀であるキョウカンカクの切れ味は冷徹で鮮やかだ。
それにしても、最後のどんでん返しには驚かされた。ここまで書き切ると、美しいまでに哀しい結末である。