舞台はある全寮制の学院。初夏、悠(宮島依里)が湖に飛び込んで自殺し、そして夏休み。和彦(大寶智子)、直人(中野みゆき)、則夫(水原里絵=現・深津絵理)の3人だけが家に帰らず寮に残った。悠は和彦に想いを寄せていたのだが、それを拒絶されたために自殺したのだと自分を責める和彦を、リーダー格の直人が優しく包み込む。そして下級生の則夫もまた、和彦を慕っていた。そんなある日、悠そっくりの薫(宮島依里)という転入生が彼らの前に現れた……。
萩尾望都の名作コミック『トーマの心臓』を原作に、金子修介監督が透明感あふれる映像美と演出タッチで描いた青春映画のカルト的秀作。出演者は4人だけで、しかも少女が少年を演じるという大胆なキャスティングが見事に功を奏し、より一層ファンタジックな世界観が確立されている。(的田也寸志)
原宿娘
★★★★★
深津絵里は一回目のミス原宿だった。
そして第二回のミス原宿は、嶺川貴子だった。
どうでもいい偶然の話だが、嶺川貴子のデビューは「ファブギア」というオムニバスで、"グルーヴィー・ファンシードレス"というユニットがスタートだった。その「ファブギア」にモーマスという親日家の英国人アーティストも参加しているのだが、そこで書いたのが「1999年の夏休み」を下敷きにした「サマーホリディ1999」だった。
「1999年の夏休み
こんなふうに生き急ぎ
1999年の夏休み
こんなふうに死を望む
北海道の島の風に舞う
春の雪のように冷たい
この純粋さ」(歌詞より)
「1999年の夏休み」は「ガメラ」で有名な金子修介が若き日に指揮をとり、萩尾望都の「トーマの心臓」を下敷きにした映画だ。全員登場人物は男の子であるにも関わらず、同性愛をテーマとした原作が少女マンガの美少年たちであったため、出演者は女の子役たちが、皆男の子を演じた。その中でも最も男の子らしい役を演じたのが深津絵里だった。
あまりにも屈託のない笑顔。映画の不思議な透明感と深津絵里はぴったり合っていた。そして今でもその透明感を持ち続けている。
和彦の際立つ魅力に心が締め付けられる
★★★★★
封切り初日、舞台挨拶目当てに映画館へ足を運び、以来10回は見に行った。
ロードショー(映画雑誌)で映画公開の記事を見た瞬間、大寶智子=和彦に一目惚れしたのだ。
実際に予想通り、この映画の魅力の鍵は大寶智子にあると言っても過言ではなく、彼女の存在感、中性的美貌、演技力はずば抜けて光っており、強烈に惹き付けられた。
今でもなおそれは色褪せない。
当時恐らく16歳にしてすでに彼女のセンス・表現力は完成されている。
影を持ち合わせながらも人を惹きつけるあの雰囲気、則夫が言うように、何もしてあげなくても、優しくなくても好かれ愛され、けれど当の本人は全くそれに気づいていないという、学年に一人いるかいないかの近いようで手の届かない存在そのものである。それは大寶智子だからこそ説得力がある。
和彦を中心に、悠の弱々しくも絡みつくような存在の重さや、則夫の嫉妬と敵意、大人らしく己の感情をコントロールしながらもなお漏れ出る激情を抱えた直人との交差が更にそれぞれの輪郭を際立たせている。
劇中彩る美しい音楽はソフトフィルターと相俟って、登場人物の初々しさ、みずみずしさをこれ以上ないほどに惹きたてる。
自分もあの中の一人としていたら、確実に悠や直人側として、遠くから彼を見つめるだろう。
ただ和彦逢いたさに繰り返し再生を押す。
そして手の届かない彼に心が締め付けられ、切なくなる。
この作品の後、黒澤作品に出演して以降、大寶智子の実力・魅力を業界は見誤っているのではないか。
彼女はもっともっと上のレベルに行っていいはずの人だ。
この作品に匹敵する程の魅力を爆発させた姿をもっと見たいと切望している。
大人の客観性や冷静な分析はこの作品に触れるにはそぐわない。
まさにまだ何も知らなかった少年少女のままに純粋に素直に触れれば、もしかしたらあるかもしれないが実際はどこにもないであろう現実の狭間の、神秘的なひとときの傍観者になれるだろう。
幼さの世界観とは、理屈を越えたファンタジックな現実世界そのものなのだから。
一度魅せられれば、見る度にさらに惹き込まれるはずだ。
とりあえず
★★★★★
ボク言葉を話す若すぎる深津絵里がみれるだけでもアリ。深津さんのみが地声で他は声優が当てています。デビュー作でありながら演技力が一人抜き出ているのが見て取れます。
派手さはなくしっとりした映画ですがたまにふと観たくなる魅力がありますね。
中村由利子さんのピアノが秀逸♪
★★★★★
ずいぶん昔の作品ですが、私にとっては特別な思い入れがある作品です。
初めてみたのは社会人2年目(トシがバレる^^;)。
当時は一人暮らしで、たまたま立ち寄ったレンタルビデオ屋さんで
”変わったタイトルだな〜”という理由だけで1週間レンタル。
しかし忘れていて、返却日の夜に気付き、つまらなかったら早送りして返そう・・・
と見始めたのですが、高原風の爽やかな風景と、演じている女優さんたちの卵の
pureなかんじ、そして透明感のあるピアノ。釘付けで見てしまったのを覚えています。
結局その晩に返したんですが、見終わって何日か経ったら、また見たいというか、
またあの世界に戻りたいような感覚が襲ってきて、もう一度借りました。
原作(萩尾さん)や、ロケ地などについては各種サイトが立っていますので
興味があれば検索してみてください。
思い入れというのは、当時つきあい始めた彼女と一緒にハマって何度もみていたからです。
現在は私の奥サンしてくれてます^^;
特に、まだそんなに売れていなかった女優サンたちの将来性を予見させるような
まっすぐで、どこか学芸会風、素人っぽい演技が逆に初々しく、この映画に不思議な
テイストを持たせていると思います。
中村由利子さんのCDも買い、あれから20年経った今でも、通勤中にiPhoneで
聞いたり、休日の午後にゆっくり珈琲を淹れて、妻とBGMにしてぼーっとしてます。
ジャンルはSFなので、嫌いな方もいるかもしれません。
といっても放射能汚染後の仮想世界という設定は、ストーリーの中ではあまり重点が
置かれず、寮生たちの人間関係が主軸のため、SFアレルギーはあまり感じないと
思われます。
通して20回以上見ているので、もうセリフもストーリーも完全に復唱できそうですが^^;、この映画を見ると当時の一人暮らし、途中からは二人暮しになった頃のことが
とても懐かしく思い起こされます。
深津サンとか、こんな売れっこになるとはなあ〜^^。
素晴らしい!
★★★★★
最高です。美しい映画です。セリフも透明感あふれていました。
最近偶然にこの映画の存在を知りましたが、本当に出会えてよかったです。
fantasyではありますが雰囲気は『櫻の園』に似ています。