講演は面白かったけど・・・
★★★☆☆
先日、押田先生の講演を聞く機会がありました。我々医療従事者が医療事故に対して漠然といだいている印象と、実情とのギャップを、大変おもしろく、わかりやすく説明していただきました。講演の組み立て方も、かなり周到に準備されている印象を持ちました。
というわけで、この本をネット買いしてみたのですが、正直、ちょっとがっかり。どのような読者を想定して書いたのかはっきりせず、加害者側となる医療従事者にとっても、被害者側の患者・家族にとっても、中途半端な内容になっている印象は否めませんでした。
新書という媒体では、どうしても総論的な内容になってしまうのかも知れませんが、あの講演を聞いた後では、よけいに退屈に感じる内容でした。
平易かつ具体的!
★★★★★
著者は法医学を教授しています。筋肉注射による弊害の論文をお書きになったり、司法解剖に携わられたりしています。
特徴は①251頁と薄い②言葉遣いが非常に平易③具体的な事件を取り上げており、非常にイメージしやすい点です。
②について
ただ、言葉遣いは平易ですが、法律を紹介している部分を見ると、果たしてこれで非法学部生は理解できるだろうかと思うこともあります。逆に、法学部生である私には、医学的な知識が必要な部分は必ずしも理解できませんでした。
しかし、全体を通じてこれ程読みやすく具体例が豊富な本には久しぶりに会いました。
③について
トピックごとに必ず具体的な事件や事故を取り上げています。論じる順序は大体、前提となる基礎知識→どのような事件が起きたのか→なぜそのような事件が起きたのか→どうしたら防げるのか、です。
例えば、「与薬の方法と特徴」として基礎知識を確認→インスリンを過剰投与した事件等、複数紹介→指令を出した人の字が汚かったり、投与する人が確認しない等の原因→対策として3つの段階で確認するという風に流れていきます。
本書では実際に生じた事件を扱っていますので、ヒューマン・エラーがどのようにして起きるのかを考える上でも非常に役に立つと思います。すなわち、医療事故に携わる人だけでなく、種々の危険な業務に携わる人にとっても参考になりうるでしょう。
他人事ではない事を痛感
★★★★★
これからも医療の助けを必要とする我々には知っておかなければいけない事が、たくさん綴られていました。自分の身は自分で守らなければいけないと結論に達します。