20年早すぎた治療者
★★★★★
本書の評価は、訳者あとがきに言い尽くされているので、別な観点から述べたい。シュヴィングは看護婦から精神科医になり、「中世の聖者のごとく・・・」と言われるほどの賛辞を得たが、彼女の患者への接し方と習ったものが、あまりに隔絶していることに困惑を感じなかったのであろうか?
結婚し子どもをもったとき「母なるもの」を与えることができないと精神病者に対する治療をやめたようだが、理解し難いところであり、その原因はむしろ上記にあるのではないかと思わせるほどである。もし彼女が、自己の患者への接し方に価値を認めていたら、何故それを後継者に伝えなかったのだろうか?それが、治療法と認められれば、ロジャーズを待たずとも「人間性心理学」は20年も前に完成し、その後の精神医学に大変革をもたらしたはずなのだ。何か、釈然としないものが残る。