読むものを引き込みます
★★★★☆
海兵隊退役軍人、超一流の狙撃手、ボブ・リー・スワガー、
”極大射程”の事件の後、ひっそりと家族で暮らす彼のもとを、
彼の父、殉死したアール・リー・スワガーの本を書きたいという青年ラスが訪ねてきます
父の死に向き合おうと、ラスとともに当時の調査を開始するボブ
そのボブたちを何ものかが亡き者にしようと画策します
父の死に隠された何かがある それは何か
その過程で協力を仰いでいた信頼できる弁護士サムが殺されます
幾度かの死線を乗り越えてたどり着いた真実
そしてラスの父により射殺された凶悪犯ラマー・パイとの驚くべき因縁
時代を超えた各出来事が折り重なって、読むものを引き込んでいきます
ボブの父アールの死に本当の意味で絡んだ人々
アールの死の調査を阻もうとする権力者 その権力者が知った真実
アールが知る良しもなかった”過ちの行方”
そして真実へたどり着くためのボブの死闘
銃撃の場面描写はもちろんその構成、最後に待つ”あっ”と唸らせられるボブの言葉
いやあ本当に上手いです
戦争と銃が身近なアメリカ人とその家族の物語
★★★★☆
通常シリーズ物というと主人公が読者と同時代を生き、共に年取ることで読者側の親近感が増していきます。そのため、時系列的に物語が展開していくパターンが多いのですが、本作は過去の出来事、特に主人公の父アール・スワガーが生きる時代が交錯し物語を立体的にしているといえるでしょう。
アメリカは第二次大戦後日本比べ、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争と頻繁に戦争をしています。それゆえ一定の間隔で戦争を体験した世代がおり、父アールは太平洋戦争、ボブはベトナム戦争に出兵しています。これにはアメリカ政界にがっちり食い込んでいる軍需産業がたくみに演出しているために、定期的に武器のたな卸しをするように戦争が起こります。帰還した軍人はそれぞれに心に傷を負い、あるものは癒され、あるものは狂気を持ち帰ってしまいます。そういう点で戦争に対する距離感が日本人とだいぶ違うのだと感じました。
極大射程に続いて本作でも銃に関する記述が詳細に描かれます。ただ作中、銃による事故はつきもので、扱いを仕損じれば、一瞬にしてすべてを失うといった記述があり、作者はただ銃に魅せられて賛美してるのではなく、銃の文化的側面と負の部分両方を受け止めてその上でアメリカ人の文化として銃を著作に登場させているのだと思いました。
男から男達へ−二世代の物語
★★★☆☆
ダーティーホワイトボーイズもテーマは「父性の復権」でしたが、
今作のブラックライトも父と息子、二世代にわたる男たちの物語と言えます。
著者のスティーブン・ハンターは、主人公のボブ・リー・スワガーの活躍と
脇役たちのエピソードを通じて父と息子のあるべき関係や父親像を執拗に追
い求めている気がします。(少しベタな表現ですが)
「極大射程」は男(個人)の物語でしたが「ダーティーホワイトボーイズ」「ブラックライト」は男達(父と息子)の物語です。
次作の「狩りのとき」が、どのような展開をみせるか楽しみです。
それと本シリーズの特徴である銃器にまつわる詳細な記述は、素材である金属を
イメージしての「冷徹さ」や銃弾の「冷酷さ」などリアリティと「男の道具」として
比喩を持ち合わせていると思います。
やっぱりボブが良い!
★★★★★
この本の面白味は、
1.謎解き
2.ストーリー
3.Detail(特に銃関係)
4.そしてやっぱりボブの強さ、クールな魅力に尽きるのでしょう。
父親の死の謎が解き明かされ、それと共に、黒人少女の死の謎、他もろもろの綾が解きほぐされ、副大統領候補を巻き込み壮大な物語が展開されます。
主人公がしっかりしており、それに付随する展開がしっかりしている。
読み物としては十分お薦めできます。
前作よりはやや落ちる
★★★☆☆
前作のPoint of Impact同様、文章は読みやすく物語の展開も速い。前作の数年後を舞台にして再びボブ・リー・スワッガーを主人公にして物語は展開する。スワッガーはジャーナリストの青年と共に、州警察官だった父親アール・スワッガーが強盗犯に殺された事件を調べ始めたところ、過去を暴かれたくないある人物がスワッガー達の調査を阻止しようとあらゆる妨害を加える。銃撃シーンではスワッガーは無敵と思える強さを発揮するが、前作の銃撃シーンよりは若干スケールダウンしておりアクション物としてはいま一歩といったところ。ただ、最後の謎解きは予想外のものでありミステリーとしてはそれなりに楽しめた。過去の父親の話も同時に進行し、父親アール・スワッガーの息子ボブ・リーに対する愛情、また、息子ボブ・リーの父親に対する敬愛の念がよく伝わってきた。