ブックレットやインナーに用いられているEP盤の写真、その中には本作未収録の物があり(『嘘でもいいから』など)、殊にブックレットに関しては単なる歌詩カード状態。本來ならば購入者が立腹しても不思議ではなく残念だ。ブックレットにはもっと力を注いでもらいたい。
しかし。それ以上にマニアックな選曲、初CD化曲が割合多く含まれており本当に大手企業である東芝が企画制作したものかとこちらが不思議に感じてしまう。
『陽のあたる場所』、『窓』は筒美京平作品。そして筆者が最もCD化を待望していた作品だ。(発表当時は前者がA面、後者がB面)
この2作品、特に『窓』はとても重く、哀しい作品である。奥村チヨの艶っぽい唄声が泣き声のようにすら聴こえる。『終着駅』を想像して頂ければ概ねの予想と外れないだろう。『窓』が聴きたいためだけに即購入した。
音も丁寧にリマスタリングが施されており、『恋泥棒』のエンディングの処理(フェイド・アウト)はこれまでの中で最も良い。その代わりに『終着駅』のオープニングが半端になっており残念であるも、これは他のCDで多く完全版を聴けるため我慢できる。『ごめんネ…ジロー』などは古いCDだとマスター・テープの劣化が存在したのか音に痛みが認められた。本盤では美しくクリアな音色に甦っており、うれしい。
それにしてもベスト盤とは思えぬマニアで豪快な選曲ぶりである。
ゴールデン・ベスト・シリーズでは北原ミレイに次ぐ快挙ではなかろうか。2004年の東芝は驚きとよろこびを我々に届けてくれる。購買意欲をそそられる音源を制作してくれるようだ。ケチを付けようとしたならば幾らでも付けられるが…音源の良さ&選曲。故に筆者は5つ星を標す。
そして最後に、本作がCCCDではない事実に感謝の念を込める。