心に深く染み入る名詩集である
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北原白秋序、室生犀星跋という詩集。白秋は言う「清純な凄さ、それは君の詩を読むものの誰しも認め得る特色」 犀星は「特異な世界と、人間の感覚を極度までに繊細に鋭く働かして」「苦悶を最も新しい表現と形式」によって表わしたと言う。
「竹とその哀傷」では、地底に根を張る竹の繊毛に思いを寄せる繊細鋭敏なな神経でうたう。
「悲しい月夜」では、月に吠えている犬を哀れみ「青白いふしあわせの犬よ」と呼びかける。
「さびしい情欲」では、よにもさびしい私の人格は、情欲をもてあまし、憂愁に沈んでいる。
「見知らぬ犬」では、どこへ行くのわからない見知らぬ犬に自分を重ねて、淋しさを感じる。 恩地孝の挿絵・装丁がまた詩想に合って、心に深く滲むすばらしい詩集になっている。