汚れを知らない自由の魂
★★★★★
生誕100年、死後70年。わずか30年しかこの世に生きられなかったけれど、その清冽なリリシズムの詩は、ずっと生き続け、決して色褪せ古びることはない。
本書美麗に、鮮やかに仕立てられていて、特に初めて見る可憐な写真の一葉一葉に魅入られてしまう。1頁、1枚めくるのが惜しい。「いとおしい」という気持ちが先立つのは、私だけの思い入れだろうか。
「生い立ちの歌」〈幼年時〉私の上に降る雪は/真綿のやうでありました…
「汚れつちまつた悲しみに…」汚れつしまつた悲しみに/今日も小雪の降りかかる…
佐々木幹郎が中也の日記を「降る雪はいつまで降るか」と題してまとめているが、中也を象徴するのは「雪のメルヘン」「汚れを知らない自由の魂」かもしれないと思う。平成を越えて更に未来にも輝きを増す【永遠に清冽な魂】の詩人、その人の名は「中原中也」