本が出たら読んでしまうけれど
★★★☆☆
この人のエッセイは映画、スポーツ、広範な社会、政治の話題などを取り上げているのでとくに映画好きの私は大抵読んでいるのですが、いつも読後感が少しすっきりしないのはなぜだろう。それはこの人の批評には殆どの場合「逃げ」があるように思うからではないか。「素人だから」「あまり勉強していないから」「怠惰できままに人生生きてる私ごときなので」といういいわけがちらほらし、それが彼女の保身なのかなあと少し不愉快。ま、エッセイとは熱くならずにその程度が気楽に読めるんだろうけれど「ちょっとずるいんじゃない」と思ってしまいます。
嗅覚の問題でしょうか
★★★★★
「かぼす」さんのレビュー参考になりました。早速買って読みました。
特に興味を引かれたのは「かもめ食堂」に関するくだりのところ。実は自分も「かもめ食堂」には、なんか違和感を感じてました。
フィンランド、オシャレな北欧インテリアのカフェ、もたいまさこ、片桐はいり、小林聡美、と並べられると、さも何か意味ありげな感じですが、同時にある種の臭気が漂ってくるのも事実。
20年前のアグネス騒動の時に中野さんが言った「アグネスが撒き散らしている臭いに耐えられるかどうかという嗅覚(センス・美意識)の問題だ」を思い出しました。
なるほど、「マーケティング臭」「偽善的」というのは、スッキリさせてくれる回答です。
年末恒例のおたのしみ!
★★★★★
そういえばこんなこと、あったな〜と今年1年を思い出しながら、わが意を得たりとうなずいたり、え〜?中野さんはそんな風に感じたの?なんて驚きながら、読んだ。政治に映画にファッションにテレビに事件に本に落語に三面記事…浮世の話題がてんこもり。
共感した話題その1:「ホリエモン有罪について。私のオキテでは人々の生活の根本や生産の現場からあまりに遊離した世界で金儲けをする人間は尊敬しない、ということになっているのだ。『有罪か無罪か』『悪か善か』ではなく、『敬意を払えるかどうか』だ。」
共感その2:夫が犬という設定の、携帯電話のCMが不快だと著者。「これ、面白いんですか。笑えるんですか」。まったくもって同感です。どこが面白いんだか…。
共感その3「私はこの1、2年、お天気キャスターやアナウンサーたちの間で大流行の『鏡獅子』や『連獅子』を連想させるヘアスタイルが気になって、内心ひそかに『小津殺しヘア』と呼んでいた。首すじを隠し、前に垂らした髪が目ざわり」。このくだりはイラストも秀逸で笑った!
驚いた1節:「私が近頃最も憤懣耐えがたく思っているのが『かもめ食堂』『めがね』のヒットぶりだ。あんなマーケティング臭ぷんぷんの偽善的映画はない!」。偽善的、かなあ?うーむ。
日本中が注目した大きな事件と、個人的でささやかな発見が、1冊に凝縮されている。よほど注意深く情報収集しないと見逃してしまいそうな良質な映画や本を紹介してくれているのも有難い(ドイツ映画「善き人のためのソナタ」、すごく見たくなった)。
中野さん自身によるイラストも、丁寧で、味わい深い。少女のような軽やかさを失わないで、でも婆さんらしい(失礼)昔の話や説教めいたことも、ぴりりと書き続けてほしい。年末にまとめて読むのがほんとうに楽しみ。表紙も懐古趣味なような、逆に新しいような感じで、すごくいいセンス!