歌舞伎をみんなに!
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表紙絵は、友禅の模様絵師、伊東隆久が描くカブキッズ版「助六」と「揚巻」。巻頭対談では、イヤホーンガイドの歌舞伎通、おくだ健太郎の相手に、話題の茂木健一郎が呼ばれています。となるとnet時代に乗った軽いカブキ解説書かなと思えます。ところが、読んでみると、歌舞伎全般を漏れなく、公平に紹介しています。
○荒事、和事、世話物、松羽目物など10のジャンルに分けられた有名演目21が解説されています。初めて観る人にも判るように、丁寧にやさしく書かれています。○歌舞伎の約束事百科とでもいうべきウィキペデイアならぬkabukipediaは、経験者にも面白く読めます。歌舞伎の音楽を担当する唄いものや語りものの見台は、音曲の種類で違うそうです。そう言われると、確かに長唄と清元、常磐津、義太夫の譜面台はそれぞれ違っていた気もします。歌舞伎のトレードマークの様な柿色・萌黄色・黒色の3筋の縦縞からなる歌舞伎の定式幕が、江戸時代には、座ごとに配色順が違っていたなんてびっくり。○これから歌舞伎見物を始める方のための歌舞伎座ガイドがあります。ここは、至れり尽くせりの親切さです。○付録に簡単な用語解説と、現役役者20家の家系図があります。この家系図が一番気に入りました。歌舞伎役者の「芸談」などを読むときに、この系図を傍らに置いて、大いに重宝しています。
このガイドブックを読んで、歌舞伎に興味が湧き、その気になったら、後は歌舞伎見物に繰り出すしかなさそうです。舞台のスペクタルの大きさ、背景や衣装のきらびやかなこと、女形の美しさは、実物で感動するのが一番です。