琴線に触れる拳闘コラム集
★★★★★
ラグビープレヤーであった著者の、最高のスポーツコラム集の一つ。
対象がボクシングであろうが、ラグビーであろうかは関係ない。
著者の取材対象に対する尊敬の念、深い愛情が、卓越した洞察力と表現力によってこちらの琴線に響いてくる。
一編一編の熱あるストーリーは、当然のことながら、それぞれが違ったラウンドとして、グイグイとこちらを引き込んでいく。無名の若者の葛藤から、世界のビッグネームの逸話までが同じ熱で語られるのが心地よい。
記者席から、選手控室から、そして著者がその時々で行き着いた場所から届けられる「キャンバスの匂い」は、一貫して熱く、温かい。
個々のコラムがみな感慨深いのは、個々の選手の闘いの背景、キャンバスから離れた空間での心情描写こそが繊細になされているからであろう。
無意識に?また一人でホールに行きたい気分させられる。
ボクシングファンでなくとも、スポーツを愛する人なら、是非とも読んで欲しい良書である。
キャンバス、芝、土、フロアー・・・どこかで必ず共通の匂いがあるはずだから。