子どもの健気さに涙…!シングルファザー(と寂しいゲイリーマン)の救済物語。
★★★★★
頑張りすぎて心底疲れているシングルファザーの美人板前。彼を口説きまくる、本音の見えない「恋多き男」。二人とも臆病で孤独感を感じているが、やがて自分は孤独ではないこと、お互いはもちろん、周りにちゃんと助けてくれる人々がいることに気づいてゆく、というヒューマンドラマ。しかも、ノンケが攻めの愛と懐の深さにより少しずつほだされていくという「じりラブ」でもあって、とても読み応えのある全2巻でした。
全体としてはほのぼの。しかし娘が病気になった時の主人公の切羽詰まった綱渡り感とか、「よっしー」の過去(淡々とした描写ですが、昨今の社会問題ともリンクしている)などは、実はかなりシビア。主人公の元妻がまた身勝手な女だったりもする(それがよっしーの包容力を引き立ててもいる)。ただ、元妻にはかなりムカつきますが(あとあのクソガキにも!)、作者は彼女のことも最後にフォローしていて、後味は悪くない。
主人公を取り巻く登場人物たちがまたすごく良い。特に娘…!お父さんが大好きで、ガマンばかり上手くなった幼稚園児。本当に可愛くて可哀想で涙が出ます。後ろ向きのパジャマ姿の全身像なんて、見ているだけで泣けてくるほどいじらしい(作者の絵の上手さがあってこそ)。あと、よっしー作「ウサギさん弁当」は超キュート。必見です(主人公の勤め先の料理屋の店主ももちろんステキです。スピンオフが読みたいですが、無理っぽいですね…)。
ディテールに必然性があり、ちょっとした伏線がきちんと回収される、丁寧な作りに愛を感じる本作品。作者には、今後もぜひ長編でじっくりと物語作りに取り組んでほしいと思います。
ところで、本作品を読んで、中村うさぎが先月の週刊文春に書いていたエッセイを思い出しました。シングルマザーを応援するゲイコミュニティの話で、感動のあまり涙してしまった。それで余計に本作品が沁みたのかもしれません。
BLの枠に納まらない良い作品
★★★★★
面倒見はいいが恋愛が長続きせず周囲から軽い男と思われているゲイリーマン攻と
生真面目で娘のために頑張るバツイチノンケシングルファーザー受のお話です。
受の可愛らしい小さな娘さんを初め
人物描写のはっきりした脇役キャラがたくさん出てきて物語を盛り上げます。
状況が刻々と変わるので上下2巻ながら中弛みもなく
一気に楽しんで読めました。
内容の比重としては、受の元嫁が出てきて大きく物語に関わったりするため
BLものとシングルファーザーものが半々くらいの印象です。
加えて、男同士の恋愛を社会的にリスクのあるリアルなゲイラブとして描く部分がありつつも
当人同士の感情の持ち方にはファンタジックなメンズラブとでも言うべき流れがあって
ガチガチのシリアスではなく、コミカル要素や甘いシーンも入っています。
事件の起きるテンポや描写の仕方など
家族もの実写ドラマを思わせる雰囲気があるので
その辺りが好きな人におすすめです。
大人っぽいってより若々しくて寧ろ爽やか
★★★★★
既刊にも登場したおもいっきりゲイタチでへらへらしてる吉岡登場。
真面目な子持ちの受けとの大人の恋物語ですが、大人大人してなくて、むしろチャラ男の真面目姿が少し若くて爽やかな作品。
嫌味がなくておススメです。
一番感心?したのは、実はちょっと嫌な役として登場した受けの直樹の元妻。
子供を返して欲しいと願い出てくる役どころですが、彼女の天然の性格をこの作品ではとってもさらっと上手く表現してて、脇キャラ+BLでは疎外されがち女キャラですが、扱い方に感心させられました。
まあそのあたりはご自身でご確認を。
それ以外も直樹の職場の店長だとか、脇キャラが面白く味があります。
上下巻同時に出たので尻切れ感もないし、一気読みでがっつり楽しめると思いますよ。