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ヴェニスの商人 (岩波文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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言葉のリズムで一気に読ませる素晴らしい翻訳 ★★★★☆
悪役のシャイロックの悪辣さより、人を人とも思わない態度、肌の色の違う人間に対する差別、お金を持っている有色人種に対しては表では丁寧な態度をとりながら裏では軽蔑しているという裏表のある態度など、主人公のアントーニオやポーシアの方の非道ぶりの方が鼻についてしまうのは私だけだろうか。ともあれ翻訳の日本語のリズムが素晴らしく、一気に読ませる。
読むのが嬉しい。 ★★★★★
高校の文化祭あたりで「ヴェニスの商人」は演じられているのではないでしょうか。
それほど、この作品は日本人に馴染み深いものだと思います。
私の記憶では、裁判の場面がとても印象が強く、そういう物語だと記憶していました。
勧善懲悪で、強欲な高利貸しを懲らしめる物語のようなイメージです。
暫く経って、劇団四季の「ヴェニスの商人」を観た時に、金貸しのシャイロックに多分に肩入れした演出になっていて、悲劇のような印象を持ちました。
改めて、原作を読んでみて、この作品の凄さは、二重写しになっている点だと思いました。
シャイロックの側からもアントニオーニー達の視点からも読むこともでき、両者の視点から交互に場面を入れ替えて読める点です。
シャイロックに現代人の視点を置くようになって、この物語は一層深くなっていったようです。
また、この作品の素晴らしい点(シェイクスピアの作品はどれもですが)は、読むのが楽しくなる点にもあります。
シェイクスピアの、比喩、誇張、レトリックを味わうのは実に楽しいのです。
この物語の元ネタは「デカメロン」にあるそうです。そちらも一度読んでみたいと思います。
喜劇だった ★★★★★
テレビの映画で偶然裁判のところをみました(2010年2月頃)。
この映画は『ベニスの商人』のパロデーなのかと思ってこの翻訳を読みました。
あの裁判は真面目な話だと思っていたのですが、そうではなく喜劇としての扱いのようです。
映画は最後のところしか見ていないのですが、パロデーでもなんでもなく原作そのものということになります。
 シャイロックは裁判に負けて即座に財産を失ったのかと思っていましたが、死んだときに遺産を娘夫婦に与えることでよかったことがわかりました。
死ぬまでは生きていけることになります。
ポーシアとシャイロックの人間性がすばらしい ★★★★☆
シェイクスピアというと、イングランド最高の文学者ともいわれていますが、身構える必要はありません。彼は小説化ではなく劇作家なので、その作品はあくまで劇の台本です。
このヴェニスの商人ももちろん劇台本で、シェイクスピアの代表作のひとつです。
学術的に云々していくと、さまざまな論文がでるほどいろいろと深い作品ですが、本編自体は、すでに述べたように劇の台本ですからほぼすべてが会話となっており、決して読むのに時間がかかるというものではないです。しいて言えば、誰が発言しておりその人はどういった人物なのか、といった、劇では問題にならない部分(視覚からの情報ですぐわかる)がやや煩雑であるかなと思います。
内容としてはとても面白く読めますし、シャイロックの人間像は現代においてもいろいろなことを考えさせる、悲劇的な人間像でもあります。ポーシャの聡明さ、軽快さは現代の女性かと見まがうほどで、輝いています。
しかし一方で、文章として読んだ場合、アントーニオを含めて前述2人以外の人間像はいまひとつで、なかなかコメントにこまる質となっています。また、文章として考えるとラーンスロット(道化。劇だとその言動で笑わせたり、観客の失笑を誘ったりするわけです)は存在する意味がなく、文章の流れを滞らせ、場面展開や内容把握に悪影響を与えています。後ろの解説にもあるように劇として考えても「質が悪い」道化なのですが、文章になってよりひどい状態になっています。
そう考えていくと、作品としては大変すばらしい一方、いまひとつできの悪い部分も目立つ気がします。もちろん、確実にお勧めできる内容ではありますが、「とんでもなくすばらしい作品」と思って読むと肩透かしを食らうものではあると思います。
解題も充実 ★★★★★
ヴェニスの商人アントニオは、その竹馬の友であるバサーニオに、
彼が恋い焦がれるポーシャに遭うためぜひともお金を貸してほしい
と頼まれる。二つ返事で快諾したものの、ちょうどそのとき自分の
財産を積んだ船がすべて海上にあったアントニオは、普段は軽蔑し
てやまないユダヤ人の高利貸しシャイロックに不本意ながらもお金
を借りることに。自らの命と引き替えに借りたその金は、戻ってくる
自分の船の財産からすぐに返済するつもりであったが、船の難破
によって事態は思わぬ方向へと傾き始める…。

シェイクスピア『ヴェニスの商人の』の新訳にして、名訳と言っていい
本作を手がけた訳者安西徹雄が語るとおり、本作でもっとも読者に
その印象を残すのは、アントニオでもバサーニオでもポーシャでもなく、
その禍々しい存在感際立つシャイロックだ。「ユダヤ人には、手がない
のか。…」。いわれなき差別を受け、娘には逃げられ、あげく財産さえ
奪われる彼の絶望は、底が見えないほど深い。

そのように、確かに本作にはユダヤ教やユダヤ人への引くほどの差別
的な発言がたくさん盛り込まれているが、それが時代的制約というもの
であって、一つの歴史的資料として片付けておくべきことだろう。むしろ
ここは、それを「引くことのできる我々」の文明的成熟を喜ぶべきだ。

窮地に陥ったアントニオを、博士に変装したポーシャがいかに助けたか。
最後は一休さんの「虎を屏風から出してください」の話みたいで、とんち
が効いていてよい。

それからあともう一つ、僕らがこの作品から学ばなければならないのは、
「どんなに仲がよくても、借金の保証人になってはダメ!!」、こういうことだ
ろう(ちがうか)。