本書の目的はこのような例題を通して、社会的知能(S.I.Q)の
改善をめざすことにある。「社会的知能とは、ボディランゲージに含まれる
手がかりを解読し、他人の行動、感情状態、関係性を推理する能力」だという。
この社会的知能があれば、電車に乗っても、着席している客の中から
すぐに降りそうな人を見極めて後に空席を確保できるし、
ファーストフードのお店でも、一番早く捌けそうな列に並んで
素早く注文することができる。
本書では、これらの社会的知能を法則や体系にまとめるまでには至ってないが、
示唆に富んだ様々な指摘があり驚かされる。またボディランゲージには
文化的差異があるので、アメリカの学者による分析を無批判に受け入れる
ことは出来ないが、社会的知能を向上させるための視点や手法は
有用であると思われる。
冒頭の例題を解くカギとしてこの学者はカップルの手の位置やその様子を
指摘した。これはある日本の映画監督がいい女優を見定めるときに手を
注視するという知見と全く同じであった。洞察力の人になるには、
よく見なければならないというごく当たり前のことを強烈に再認識
させてくれた興味深い本。