多分まだ「子ども」だった頃、この東京創元社の『ランボオ詩集』のセピア色に変色した初版本が家にあったので読んだ。歴史を刻み込んだこの本が、ライブラリの一冊となって再登場した。私にとって、ランボオの翻訳は、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』の翻訳が氷上英広でなければならないように、小林秀雄の翻訳でなければならない。
「如何にも、新しい時というものは、何はともあれ、厳しいものだ。(……)暁が来たら俺たちは、燃え上がる忍辱の鎧を着て、光り輝く街々に入ろう。(……)さて、俺には、魂の裡にも肉体の裡にも、真実を所有する事が許されよう」(『地獄の季節』の末尾「!別れ」より)