デッサンが生み出す世界
★★★★☆
ガブリエル・バンサンの著書と初めて出会ったのは話題の処女作『アンジュール ある犬の物語』でした。嗚呼、何て著者のデッサンは複雑な描写でもなく柔らかなどちらかと言うと線の少ないデッサンなのにこんなにも物語るものがあるのだろうか…そして言葉数が少なくとも、それ以上に与えられるものがあるのです。バンサンさんの自在な線が描く世界は何て美しいのか、まるで描かれたもの全てが動き出してしまうのではないかと思ってしまうのです。此方の『マリオネット』も同様に、ひとつの言葉も用いずに確かなそしてシンプルなデッサンで物語っています。特に子どもの表情が素晴らしい。何処か、また小天使にも似た子どもの表情。泣き笑い、驚き、興味津々とマリオネットを覗き込むその表情は正に生きている子どもそのものの表情なのです。敢えて余白や単調かつ無駄のない描線で仕上げることで、ストーリーや会話を想像する楽しさがあります。バンサンさんの作品に触れる度に、大切な何かを思い出し少しだけ童心に戻ったような懐かしい響きが心の中に温かと広がっていくようなそんな気持ちにさせられます。素敵な絵本をまたありがとうございます。
絵本の傑作・どう読むかはあなたしだい
★★★★★
ガブリエル・バンサンの確かなデッサン力と、
シンプルだけとまねできない構図のとりかたと
無駄のない線と、あえて書かないことによる余白の効果と
絵の1枚一枚が美術品としても一級品。
子供向けとしては、ちょっと大人びた感じだし
大人が読むには、子供っぽい
静かな夜に大人がひとりで読むのも楽しいし、
子供たちをひざに乗せて、
何を話しているのか?想像させるのも楽しい。
まさに、絵本の原点をいく一冊。
心で読む絵本
★★★★☆
ひとつの言葉もそこには描かれていない。真っ白い紙にそのままのせたデッサン画はその表情が嘘ではないことを突きつけられる。いつのまにか大人になってしまったあなたへ、幼かったあのころにもう一度、自分の声で触れてみよう。