頭ではわかっているけどできない
★★★★☆
効率的な時間の使い方について説いた論文集。HBRの論文は難しいものが多いが、その分読み応えのあるモノが多い。印象的だったのは、時間的制約のある中では人はいいパフォーマンスを発揮できない、ということ。
自分なんて最近はもっぱら「追い込まれるまで手をつけない」性格になってしまって、締切の前日に一気に取り掛かるほうなんですけれども、そういう状況下では最高のパフォーマンスが発揮できないよ、と本書の中で言っている。
わかる。そりゃそうだ。ロクに準備もしていないわけだし、じっくり内容を考える時間もないし。書きながら考え、考えながら書くわけだから、油断すると矛盾した内容に出来上がったり無駄が多くなったりする。わかってるんだけど、ついついそうなってしまうのはなぜかといえば、そうやってできた成果が、そこそこのモノであることが多いから。要は、なんとかなってる現実(軽い成功体験)があるからだ。
論理ではわかっていても、体験して得たものにはかなわない。人間てずるい生き物です。
一般ビジネス書にはない斬新な記述がある
★★★★☆
本著は、章ごとにハーバード・ビジネススクール教授などの異なる著者が担当している。日本人が著者のビジネス書のような一般的な内容ではなく、あるテーマについて深く紹介しており、斬新な記述が多くあり、良かった。特に、「第3章 時間的制約は創造性を高められるか」は、常々疑問に感じていた「時間的プレッシャーがある方が生産性が上がる」という点について、以下のような内容を基に疑問を解消できた。
・たしかに部下に時間的プレッシャーを与えると、彼らの労働量が増え、仕事が進み、さらに部下の方も、より創造的な仕事をしたような気になることがある。しかし実際には、多くの場合、時間的プレッシャーの下では創造的思考は減退する。(p.59)
また、「第7章 日本企業に迫られるタイムベース競争の再検討」は、日本が歴史的に成功した要因と、これからはその要因では成功できない理由が整理されている。
・歴史的には、少数の例外を除いて日本企業は驚くほどマーケティングが下手である。日本のメーカーは本来の賢明なマーケティング活動の代わりに、集中攻撃的な生産アプローチを採用するのである。日本のバブル経済が金余りをつくり、消費需要を増大させているかぎり、生産活動が顧客ニーズと無縁であっても何ら問題とはならなかった。しかし、バブルがはじけると、この生産一辺倒の時間アプローチに破綻が生じた。(p.183)
時間活用のテクニック本というより目標管理の方法論(+精神論?)
★★★★★
書店で山の様に積まれる時間活用本とは異なり,この本には時間を有効活用するためのテクニック(通勤時間の活用法とか,検索エンジンの活用法とか)の類は殆ど記載されていません.ある程度時間を有効に使う術を有する(実際に有効活用で出来ているかは,さておき)方が購読層なのだと思います.
多忙なビジネスパーソンに対し,時間を有効に活用しているか省みる機会を与るとともに,目標達成のためのいま一歩の努力を促す本であると思われます.また,組織の中で同僚や部下の時間管理・プロジェクト進捗の管理に携わる人にとっても有用な参考書になるかと思われます.
HBRに掲載された論文の中から時間についての物を集めたアンソロジー
★★★★☆
ハーバード・ビジネス・レビューは『論文誌』だ。論文と言うものは汎用性のある知識を正確に記述しようとする傾向があるため、これを読んだら『馬鹿でもすっきり判る』などと言うことにはならない。もし、そういうものを探しているなら他をあたるべきだ。
最新の情報が記載されているわけでもない。最新の論文は2004年のものだが、古いものは1991年のものだ。それぞれ「研究していた時には」正しかっただろうが、論文になった頃にはすでに時代遅れになりつつあるはずで、こうしてアンソロジーになった頃にはすっかり古くなっていても不思議は無い。
にもかかわらず、私はこの本の評価を星4つとした。過去の事例は「見るべき人が、適切なタイミングで読めば、最新の問題に当てはめられる解決策を示唆している」事が多いからだ。論文集は基本的に時系列でまとめられており、共通のテーマではまとまっていないから、こういうアンソロジーの形でまとめ直してある本はとても重宝する。
この本は「時間」に関する話だけなので、従業員の生産性効率から、ビジネスのJITモデルまでいろいろなレベル・レイヤーについて「時間」を評価軸にしたものが集められている。個人的には第3章の「Creativity Under the Gun」が参考になった。
即効性を必要とするのでなければ、読んで見る事をお勧めする。
わかったような気になるだけで十分な人にお奨め。
★★★☆☆
本書の姉妹本に限らず、ビジネス書籍にはいつも苦笑を禁じえない。『いかに「時間」を戦略的に使うか』との書名であるが、結局この書名の問いかけに答えていない本。大抵のビジネス書籍はその類であり、本書はその良い見本と言える。
この手のビジネス書籍は、表現が回りくどく、例え話がやたらと多く、ざーっと読むとなんか分った気がするのだが、具体的に何かを学んだという事はない。多くのページ数に、沢山の文字を配置させているが、それだけである。
もしも自分の時間を戦略的に使いたいと思うなら、この本は読まない方が良いかも知れない。時間の無駄かも知れないから。