新たなるグレン・ミラー音楽の誕生
★★★★★
1954年。田舎暮らしの高校生が、初めて出会ったジャズが、映画『グレン・ミラー物語』であった。当時の人気俳優、ジェイムズ・スチュワートとジューン・アリスン演ずるミラー夫妻も素晴らしかったが、映画の主役はむしろジャズであり、その魅力に取り込まれることになった。第27回アカデミー賞で録音賞を受賞したと記憶する。これに味をしめた?ユニヴァーサルは、翌1955年には『ベニー・グッドマン物語』を製作し、これも相応の興行成績を残したようだ。
閑話休題。遂に!MJOのグレン・ミラーをナマで聴いた。ジャパンツアー2008の東京・サントリーホール公演の第二部は、このCDをベースにしたものだった。このCDも、充分に楽しませてくれるが、やはりナマはもっとよかった。1930年代後半から1940年代前半にかけて、多くのジャズファンを魅了したグレン・ミラーが、編曲Wizard(と私は呼んでいる)デイビッド・マシューズにより、新しく生まれ変わって世に出てきたと感じている。単にご本家を模倣するのでもなく、これまでの他のジャズ・オーケストラとも違う、そして本来のグレン・ミラーの音楽性を保ちながらのアレンジなどという、いわば無謀なチャレンジを見事なまでに成功せしめた、マシューズとMJOには脱帽するしかない。
グレン・ミラーのヒットナンバー8曲。いずれも満足させてくれる出来栄え。ムーンライト・セレナーデが入っていないのは淋しいが、或いは意図的なことかも。グレンは第二次大戦中に不幸な最期を迎えるが、偉大なるアーティストに対するオマージュと彼の遺族への哀悼をこめた、パリからの国際放送のオープニングに使われたのが、ムーンライト・セレナーデだったことを考えると、このアルバムに入れるのは、ちょっと辛かったのかなあ。