再発だが、ブックレイトによる作品分析が鑑賞の手助けとなり、良。
★★★★☆
既存の松竹BOX版を補足するかの如き紀伊国屋版BOX集第2弾。今回収録されているのは、創造社が、ATGに表現の拠点を移して以降の、68年から70年に掛けての、政治と騒乱の季節に製作された3作に、大島作品のひとつの原点と言うべき、朝鮮半島から、貧困と日朝問題を取り上げた伝説のTVドキュメンタリー「ユンボキの日記」。いずれも再発のソフトだが、大島渚のフィルモグラフィーの中でも、やはり重要な位置付けがなされている作品ばかりだ。
当たり屋、新宿、アングラ、風景論と、当時の世相と政治の閉塞状況が照射され、見直してみると、時代と歴史を色濃く感じる。その観念性を、背伸びして理解しようと努めた(分かったふりをしていた)若い頃の自分が、今思うと、放埓で気恥ずかしくなるが。
大島渚自身や同時代の批評家たちにより語られてきた映画たちへの解説よりも、横尾忠則、原将人(正孝)、後藤和夫ら当時の若者たちや、平沢剛、木全公彦ら若い世代の研究家たちによる分析が、映画を咀嚼し、鑑賞の手助けとなっていると思う。そんな意味で、このブックレイトは優れものだ。
「新宿泥棒日記」が映画デビューとなった横山リエ、出演時20歳だったとは思わなかったが、昭和のエロスを強烈に発散する女優さん。一時飲み屋さんをやってたんじゃないか?蛇足だが、真木よう子を見た時、即座に彼女を思い出した。