この本は、山頭火の行乞の毎日が生前の友人であった大山澄太氏によって訥々と描かれていく。多少の創作はやむを得まいが、そこに見えるのはたしかに山頭火その人だ。酒飲みでだらしない後悔だらけの山頭火と、それを日本のあちらこちらで暖かく見守る友人達。離縁した咲野や息子の健との切りがたい縁(えにし)の深さ。
この本は是非山頭火のように酒を友にしながらゆっくりゆっくり語り合うように読み進めたい。一読したらきっと周りの風景が変わって見えるに相違ない。