ラジオ・ノーム・インヴィジブル三部作の2作目
★★★★★
73年発表の5作目。ラジオ・ノーム・インヴィジブル三部作の2作目にあたる作品。アレン&スミスにディディエ・マルレブ(sax、fl)、スティーヴ・ヒレッジ(g) 、ティム・ブレイク(syn) 、マイク・ハウレット(b) やピエール・ムーラン(dr) ら個性的な演奏主体のメンバーが融合していた最もゴングらしい時期の作品であり、そういう意味合いだけでも重要である。
1.はスミスのペーシーなウィスパー・ヴォイスにシンセとサックスが加わる前半はほぼフリーだが、徐々に盛り上がりサイケ感覚のジャズ・ロックに昇華する。幻想的で美しい世界が描かれており、アレンのヴォーカルはどことなくチベットあたりの読経のようにも聞こえる。2.は1.を引き継ぐ形だが、ジャズ・ロック的な演奏に比較的ポップなメロディを聞かせており、なかなかの佳曲に仕上がっている。3.はヒレッジのギターが大活躍のスペーシーな一曲。カーンや後のヒレッジのサウンドを彷佛とさせる小品である。4.もスミスのウィスパー・ヴォイスが聞かれる曲だが、マルレブのサックスはどことなくチンドン屋を彷佛とさせる。5.は楽し気な酔っ払いの合唱?6.はノスタルジックなメロディを持ったアレンらしい曲。7.は東洋的な戦慄を奏でるフルレブのフルートとシンセのリード音のデュオによる幻想的で美しい曲。分かりやすい表現かどうかは分からないが、スペーシーなクリムゾンの「トリオ」(暗黒の世界に収録) という感じだと思う。ほぼフリーだが、このような曲がアレン時代のゴングの大きな魅力だろう。8.ワウを利かしたギターによるファンキーな一曲。9.はある種のロマンティシズムを感じさせる美しい曲。スミスのヴォイスと演奏隊の融合が見事であり、この時期のゴングの傑作の一つだろう。12.ではビブラフォンが登場。アレン脱退後のサウンドを感じさせる。13.はヒレッジのスペーシーなギターが印象的なカーンにも通じる曲。
様々な要素が組み込まれていながら、トータル的な完成度も高く、流れのおもしろさは群を抜く仕上がりだと思う。独特の世界を持った初期ゴングとアレン脱退以降のゴング・サウンドのブレンド具合が絶妙の作品である。