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墜ちてゆく男

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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テロ依存症 ★★★★☆
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロの生存者、目撃者、実行犯の群像劇。

気取った文体、ころころ変わる場面にいまいち入り込めず、
一周目は読み終わるのにかなり時間がかかったけれど、
二周目は気付いたら読み終わっていた。

この本は、いかにして人は自爆テロ要員になるのか。
彼らを止められるものがあるとすればそれは何なのか。
という問いに対する著者の答えなのだと思う。

「何でもいいさ。」「まさにそれだな、何でもいいんだ」(P.274)

「世界を忘れろ。世界と呼ばれるもののことなど気にするな。
 人生の無駄な時間はすべて今終わる。」(P.318)
紛れもないマスターピース ★★★★★
「あまりにも圧倒的なものを前にすると、語るべき言葉を喪失してしまう」という言葉を実感させてくれる小説。
訳者の上岡氏も、訳者あとがきで「この小説の凄さは到底語りつくせない」
と言ってるほど。下手に言うと、本当に損なわれる気がして、それは凄く残念で
あまりに勿体無いので、自分は多くを語りません。
兎に角、構成、語り、ディテイルの描写、モチーフの使い方が絶妙すぎる。

9.11当日、WTCから脱出したキース(主要キャラ)が、直後にWTC近辺の
駐車場にある看板の前を通り過ぎるんだけど、
その看板に書いてある文字「朝食スペシャル」と「背広3着大バーゲン」)までデリーロは描写してしまうのです。
「リアルに描写するには、細かいディテイルを重ねることだ」と言われているけど、ここまでくると何気ない凄みを感じます。

ゲイジュツ的すぎるか ★★★☆☆
現代アートにせよ、マネーゲームにせよ、つねにモチーフを自分の表現のなかに取り込んでしまうドン・デリーロさん固有の世界は、9.11を題材にしてもやはり揺るがなかった。9.11で被災したビルから、長く離れていた妻のもとに帰って来た男を振り出しに、「墜ちてゆく男」をパフォーマンスとして演じつづける男、老人のぼけ防止のお話サークル、廃棄された古いパスポート写真をオブジェのように飾るアート・ディーラーは実はテロリスト集団「赤い旅団」のメンバーだったのではないか、そしてテロリスト側からも見た9.11のあの衝突、といったモチーフが散りばめられるけれど、最終的に9.11をカタストロフとして扱う作者の手際は、9.11以前と比べて少しのブレもないように思える(9.11でなくてもよかった?)。
ドン・デリーロさんの、あまりにゲイジュツ的な世界は、それを受け止める確固とした文学サロンがあってのものでしょうが、もう少しモチーフの事件としての重さと葛藤してほしかった。