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ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈下〉 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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文学少年少女必読 ★★★★★
 単なる本好きの感想で申し訳ないですが、読んだ限りは人に伝えずにはいられない、その位ものすごくものすごい本です。真に奇跡の著作です。
 ホメーロスに始まりヴァージニア・ウルフに至る文学の文体を通して、それを成立させた社会の現実認識を論じた『学芸文庫』にふさわしい完全な学術書ですが、しかし私みたいな素人の本好きが読んでも楽しい、著者の抑えても抑えてもにじみ出てくるような学問への情熱に引きずられて、ほんとに楽しいです。
 こういう本にこんな表現は何ですが、一度手にしたら、ページターナーって位はまってしまうでしょう。
 この著作を書かれた時の著者は、第二次世界大戦中ユダヤ人として故国を追われ、異国の地で必要な資料もままならぬ状況で、戦争によって分断されたヨーロッパの悲劇的状況に胸が引き裂かれるような思いであったのでしょう。
 ヨーロッパ文学三千年を、殆どテキストのみを対象に眼光紙背に徹する勢いで論じられているかのような迫力は、勿論学者としての優れた資質によるものであると同時に、そのような境遇から訴えずにはおれない切実さが更に拍車をかけているようです。
 といって民族的問題を取り上げているわけではありません。あくまでストイックに『文体』を論じられた学術書です。なのに面白い、取り上げられている本を読みたくなります。
 学生時代に『文学全集』を通過された方は必読です。鳥肌立つと思います。
エーリッヒ・アウエルバッハ「ミメーシス 下巻」 ★★★★★
 下巻に至って、上巻で繰り返し語られていた、ホメロスの叙事詩から始まった流れと旧約聖書から始まった流れの二つとは異質の傾向が強く現れてくる。それは中世が終わり、人間の生が終局的にキリスト教の信仰に収斂されることがなくなった為に、一人一人が目の前の現実に神の媒介無しで晒されることになった状況をどう捉え、描写するかというテーマで、11章のラブレー、12章のモンテーニュ、13章のシェークスピア、14章のセルヴァンテス、といった風に各時代の代表的な作家・散文家のテクストを引用しながら、上巻と同様の方法で分析を加えていく。各章ごとに必ず書き分けられているのは、同時代の政治的・社会的・経済的・階級的現実に対して文芸作品がどんな態度を示しているかだ。ある時代ではパロディの素材として使用したり、ある時代では低俗なものとして無視したり、ある時代では過度に美化し理想化し、ある時代では救いのない状況として避けて通ったり、ある時代ではその感覚的印象を幻想的に描いたり、ある時代では純粋に把握し記述する対象として客観的に描写したり、ある時代では描写することでその変革を促すべき状況として捉えられ、ある時代では人が生きている、広大な時間にまたがる人類全体の生のありさまに至る契機となったり。そんなさまざまの時代ごとにみられる作家たちの振る舞いは、現代に生きている私たちが取るそれぞれの立場上の行動にも見られるものだ。その中で、近代リアリズムは、時の流れに沿って常に変わっていく社会の諸勢力の力関係と、その只中で生きる一人一人の人間の生についての歴史性への認識の下に生まれた、というアイディアは、やたら多用される「リアル」「リアリズム」という言葉に含まれる意味合いを拡げてくれるものだった。そしてこのようなテーゼも、個々の小説・散文中の文章を引用し、分析したあとに述べられる。

 最終章、モダニズム文学に就いての論考の終わりに、アウエルバッハは世界の均質化・単純化に就いて予言めいた言葉を残している。ギー・ドゥボールが言う「スペクタクルの社会」に似た近未来を想起していて、残念ながらそれは成就されてしまったかのようだ。

 ともあれ、ヨーロッパの文学作品における現実描写の諸形態とそれが仄めかす作者の心情や現実の政治・社会・経済との関係の歴史的変化が網羅的にかかれたこの本は、任意の文学作品を読む際の副読本にも、文化史書にも、一種のレトリック便覧にも使えそうだ。そして、こうしたヨーロッパ文学の流れを辿ったあとには、日本における文学と政治・経済・社会的現実との関係に就いて見えてくることがある。読んでよかった作品。
必読!! ★★★★★
まさに読むべき本です!!文学を学ぶにいたって、こんなにためになる本はないでしょう。文章はやや難解ですが、何度も読めば読むほどこの本の素晴らしさを実感できます。ヨーロッパ文学をこれを読まずして語ることなかれ!!