本作はコンセプチュアルな含みがない分、1曲ずつがコンパクトにまとまっている。計算しつくされた超大作こそ収められていないが、<6>はこれまでのダイナミックなメロディの流れを受ける、複雑な展開の曲だ。このアルバムから、エイドリアン・スミスに代わって、ヤニック・ガーズがギタリストとして加入している。
ギターのフレーズにスティーヴ・ハリス独特のバキバキしたベースが絡み、変拍子を刻みながらグイグイとプレイしていく<1>。これぞ、アイアン・メイデン流ヘヴィメタルサウンドの醍醐味といえる。(富良仁枝実)
MAIDEN史上唯一のR&Rアルバム
★★★★☆
エイドリアン・スミスからヤニック・ガーズへのメンバーチェンジを経て発表された8th作。
WHITE SPIRITTやGILLANで活躍していたヤニックについては、当時僕はランディー・ローズやジョン・サイクスのようなギターヒーローであるという認識を持っていたので、頭抜けたソリストがバンドをグイグイ引っ張るというスタンスではないMAIDENに、果たしてこの人は合っているのだろうかという疑念を抱いたことを記憶している。
で、リリースされた本作を聴くと、これが今までで最もコンパクトな楽曲群が収録された、極めてシンプルな作品になっていたので、「あれ?」という感じだった。
ヤニックのギタープレーは、確かにソリストとして素晴らしいと思わせるものではあるが、ここでは、完全にバンドの中に溶け込んでいて、必要以上のスタンドプレーには走っていなかった(内心、個人的にはもっと派手なパフォーマンスを期待していたのだが・・・)。収録曲は、意図的に調整したんじゃないかと思うくらい、(ラスト曲を除いて)きっちりと4分台の曲が並べられていた。これまでのような展開の激しい曲構成は極力抑えられていて、ライヴ感のあるノリを重視したナンバーを中心に配されていた。
そして、極めつけは、全英ナンバー1ソングにもなったブルース作の「BRING YOUR DAUGHTER TO THE SLAUGHTER」で、これは極めてアメリカンな直球R&Rソングとなっている。
こういった作品が仕上がった背景には、当時のロックシーンを、GUNSやMOTLEYなどのバッドボーイズ・ロックンロールが席捲していたという状況があったのかもしれない。あるいは、自分達の作品が、期待以上にセールス的に伸びていかないことに対する苛立ちが反映されてしまったのかもしれない。
いずれにしても、このフォーマットでのMAIDENは本作限りとなった。
そういう意味では、貴重な作品と言えるかもしれない。
90年代のMAIDEN
★★★★☆
1990年に発表されたIRON MAIDENの「NO PRAYER FOR THE DYING」です。エイドリアン スミスが抜けて新たにヤニック ガーズが加入したアルバムです。彼ららしくなく、コンパクトな楽曲と前作のような完璧な音ずくりではなく、ラフなメイデンが楽しめるアルバムです。
昨日、メタル友と飲んだときに話題に出たアルバムでしたので、聴きなおしてみたら、いいアルバムだと思います。大名盤までとはいいませんが、佳作であることは間違いありません。
本作のツアーをNHKホールの3階席で観ていました。昨日のメタル友も見ていたとのこと。不思議な縁を感じたアルバムです。
メイデンらしくないが曲はおもしろい。
★★★☆☆
約2年間の活動休止を明けての1990年発表8枚目。ヤニック・ガース(G)参加の初アルバム。彼は作品を提供していないが、彼ららしくない曲が多く大変興味深い。私は今でもこのアルバムを聴いている。ちなみに収められた10曲のうち、次の年以降もライブでプレイされたのは、ブルース作の[BRING YOUR DAUGHTER〜」のみ。これはブルースの作った大変ユニークな曲で、普通、メイデンのアルバムには採用されそうにない、露悪趣味な曲だ。彼ららしくないといっても、あくまでアイアン・メイデンなので、水準以下の普通のハードロックをやっているわけではない。新参のヤニックも早くも随所で、ためのきいたムーディな「らしさ」とソロワークを発揮しており、これが次作「フィア・オブ・ザ・ダーク」につながる。鋼鉄橋を叩いても渡らない(笑)、スティーブ・ハリスとしては休止中で曲のストックがなく、またメンバーチェンジもあり、ギリギリの選択だったに違いない。ま、問題作ということで、メイデンくらいの活動歴の長い大物バンドにはこんなアルバムの1枚や2枚あるよね、ということでかたずけられそう。私個人としては、当時ブルースが太りすぎて、声の出が悪い(特に高音)のが、大変心配になった。
聴きやすさではダントツ
★★★★★
Iron Maidenの作品の中では評価が高くないものの、曲が短くなくてさらにキャッチーという点では最も鼻歌で歌いやすい曲が多い作品。
曲が短いという点ではバンドキッズにとってはコピーもしやすいという利点もあり、ある意味登竜門的作品と言ってよいのでは?
Tailgunner、Holysmokeなどバンドでプレイすると盛り上がりそう。
小難しくないのが実に爽快!
ブランク(休暇)を経て・・・。
★★★★☆
前作(SEVENTH SON OF THE SEVENTH SON)発表後、メンバーそれぞれが休暇を取り(過酷なツアーに比して休暇が少すぎるような気もするが(苦笑))、その後作られた、スタジオ・アルバム第8作目。1曲目の「TAILGUNNER」は超名曲「ACES HIGH」の続編らしく、スピード感たっぷりのMAIDENらしさ溢れる佳曲。聴き所は、タイトル・トラックの「NO PRAYER FOR THE DYING」。陰と陽、使い分けながらも、情感たっぷりに歌い上げるBRUCEのボーカルに、テクニカルなバック・サウンド・・・ADRIANに代わって加入したJANICKのDAVEと好対照な荒々しいギターが、MAIDENサウンドに新たな息吹をもたらしている。前作までの伸びのあるボーカルに比べ、全体的に若干ダミ声気味のBRUCEのボーカルは、意図して作ったものだろうか。個人的には前作までのボーカルを引き継いだ音作りをして欲しかった・・・と思うので、星4つ。