ゲーテのよさがわからぬ老人の愚言
★★★☆☆
昔から文豪だ、天才だといわれるゲーテ。
何十年も前から、時折思い返して著書を繙いてみるが、
感銘を受ける文章に出会ったことは一度もない。
高く評価されているにもかかわらず、なぜ かくも
つまらないのか。そうした疑問を抱いて、今回は、
昔からの高名なドイツ語学者である手塚富雄氏の
ゲーテの箴言に関する随筆を読んでみた。
これを読んで、ゲーテが何故つまらないのか、
はじめてわかったように思う。
引用されている箴言は、例えばこうである。
活動だけが恐怖と心配を追いはらう。p.19
何事も延期するな、なんじの一生は不断の実行であれ。p.22
困難な務めを日々に果たすこと、ほかにはなんの啓示もいらぬ。p.23
昼のいそしみ、夕べの団欒(まどい)、汗の週日、たのしい憩い日、
これを今後の呪文とせよ。pp.24-25
昼のあいだは、はたらきなさい。p.35
我慢づよさを実証しなければならぬ者は誰か。大きい行為を
しようとする者、山を登る者、魚を釣る者。p.43
結論ともいうべきものが、次の言葉である。
いきいきとした、天分ゆたかな精神をもった人が、
実際的な意図をもってごく身近なことに力を注ぐ場合こそ、
この世における最もすぐれたものである。p.18
これらの言葉を総合すると、要するに、優れた能力を持った人が、
倦まずたゆまず毎日の務めを果たし、結果的に大事業を
なしとげること、それに最高の価値が置かれているわけである。
鴎外をはじめとする、明治期のエリートたちが、ゲーテの記述に
我が意を得たのは、むべなるかなである。彼らは、新しい国家を
つくる担い手として、日々粉骨砕身していたわけであるから。
しかしこれが現代日本でも通じる教訓かというと、疑問を
感じざるを得ない。「毎日努力して成果を出し続け、大業を
なしとげよ」というのは、現代日本に多いフリーター、ニート、
およびその予備軍の人々の、心の琴線に触れる教えとなり得るか。
それはあまりにも突き放した物言いであり、酷というべきだろう。
「精神力でなんとでもなる」というようなことを無邪気に言い放つ
精神主義は、個々の人間が様々な物理的・心理的負荷を負っている
ことに対する同情を忘れた、強者の言である。
つまりゲーテの語る理想とは、エリートが幸福であった時代の、
特定の場所においてのみ通用するものであり、もともと普遍性がない
ものではないのか。
私がゲーテをいつ読んでも面白く思えなかったのは、この普遍性のなさが
原因だったのではないか。
手塚氏の随筆を読んで、永年の疑問が少し解けたように思った。
いま、人生の指針を見いだせずに悩んでいるあなたに
★★★★★
もともとは講談社現代新書の初期のロングセラーだった。ある事情から絶版になっていた名著の待望の復刊である。おお、思春期に何度も読みかえして励まされた、熱い記憶がよみがえってきたよ。
「ファウスト」「ツァラトゥストラ」「ドゥイノの悲歌」などの不朽の名訳で知られるドイツ文学者の手塚富雄が、文豪ゲーテの知的遺産の精髄を達意の文章でやさしく解き明かした珠玉のエッセー集。これからゲーテの巨峰に挑もうというみなさんには、絶好の手引きとして、まず本書をお勧めしたい。
よくある自己啓発本などとは、まったく格が違う内容の濃さ。いま、人生の指針を見いだせずに苦しみ悩んでいる者に、ゲーテの叡智にきらめく箴言の数々は、きっと、なんらかの啓示をもたらしてくれるはずだ。
いや、別にサンマーク文庫だっていっこうにかまわないけれど、本来ならば、講談社学術文庫から再版されてしかるべき価値のある一冊ではないだろうか。
日本を代表するドイツ文学者が残した名著、ここに復刊!
★★★★★
本書はタイトルで損をしている。題名だけ見ると、薄っぺらな自己啓発本と区別がつかないからだ。しかし、そうではない。
著者の手塚氏は文化功労者にも選ばれた日本を代表する優れたドイツ文学者だった。著者が翻訳したゲーテ作品は、詩的で気品が香る格調高いものが多く、今も定評がある。
本著は、ゲーテを知り尽くした著者が、その普遍的な魅力を広く一般にわかりやすく伝えるために今から40年も前に講談社現代新書から出版した名著である。手塚氏は逝き、さらに新書の大量出版/大量絶版時代の到来によってこの本は一旦絶版となっていた。しかし、復刊サイトなどでの人気は根強く、出版社を変えて文庫本の形で再版された。文句なしに一読を勧める。
「人間は努力する限り迷うものである」。自分の人生はゲーテという巨星の跡をとぼとぼあるくようなものだったという謙虚な著者のゲーテ作品の分析は鋭くて洗練されており、何度読んでも、はっとするものがある。ちっとも難解ではなく、とてもやさしく読めるのだが、深い。ひとつひとつの解説や引用されている言葉はもちろん見事だけれど、全編を貫いているものが何より胸をうつ。本書を一読された方の多くは、その後も時々本書の扉を開くことになるのではないかと思う。
新書版についていた、手塚氏のあとがきが文庫では割愛されているのがちょっと残念だ。また、個人的な希望としては、手塚氏が翻訳した「ゲーテ詩集」も、ぜひ復刊して欲しい。
◆こころが開いている時だけ、この世は美しい。(ゲーテ、格言詩)
★★★★☆
◆こころが開いている時だけ、この世は美しい。(ゲーテ、格言詩)
この言葉からも、ゲーテは私たちが生きるこの世界を美しく見ていたのであろう。
ただ彼も人間であった。
人生に恋に、悩み苦しむ人間でもある。
しかし、常にこころを世界に開こうと常に努めた人であった。
「こころが開いている時だけ、この世は美しい」の言葉には続きがある。
「おまえの心がふさいでいるときには、おまえは何も見ることができなかったのだ」
自分の心が沈み塞がっている状態を良しとしなかったのである。
ゲーテの一つ一つの言葉は、現代の困難な時代に生きる私達を激励し鼓舞してくれる。 今一度、ゲーテの言葉に耳を傾けてみようではないか!
ゲーテは、常に瑞々しい新鮮な心で、現実をありのままに受けとめ、しかも現実におぼれることなく、理想をもってそれに対処した人であった。
現代の複雑で困難な時代の中にあって、自分自身を活かし常ににいきいきと生きるために、このゲーテの言葉に心をひそめるべきであろう。
ゲーテの言葉と通して心の対話を通じて、示唆に満ちた豊かな言葉の泉から、われわれ現代人への自分らしく生きるための知恵を汲み取ることが出来る。
ゲーテの言葉には本当の生き方を求めるものに、今も珠玉の知恵と輝きを放ち生きているだ。
ゲーテ(Goethe)は誰もがご存知だろう!
彼は18世紀ドイツに生まれた詩人であり、文豪であり、政治家であり、科学者であり、彼の生涯を通して様々な方面で才能を発揮した人物である。
特に彼の思想は、今日のドイツ人に多大な影響を与えている。いや全世界の人々に影響を与えているのだ。
現代の複雑な社会の中で多くの人が自分自身を見失い、迷い悩み苦しみ自分自身を活かせずいる。こうした時代にゲーテの思想は多くの示唆を与えてくれる。
ゲーテの全人格的な生き方とは何か? ゲーテの言葉を導き手として、自分の可能性を最大限に活かす生き方を考えてみよう!
スサノヲ(スサノオ)
手塚さんの解説がまた素晴らしいです
★★★★★
ゲーテの言葉を翻訳し、具体的な事例も交えて解説してくれている手塚さんの文章も素晴らしい本です。残念ながら絶版になってしまいました。是非講談社現代新書に復刊してほしいと思います。
ゲーテのよさがわからぬ老人の愚言
★★★☆☆
昔から文豪だ、天才だといわれるゲーテ。
何十年も前から、時折思い返して著書を繙いてみるが、
感銘を受ける文章に出会ったことは一度もない。
高く評価されているにもかかわらず、なぜ かくも
つまらないのか。そうした疑問を抱いて、今回は、
昔からの高名なドイツ語学者である手塚富雄氏の
ゲーテの箴言に関する随筆を読んでみた。
これを読んで、ゲーテが何故つまらないのか、
はじめてわかったように思う。
引用されている箴言は、例えばこうである。
活動だけが恐怖と心配を追いはらう。p.19
何事も延期するな、なんじの一生は不断の実行であれ。p.22
困難な務めを日々に果たすこと、ほかにはなんの啓示もいらぬ。p.23
昼のいそしみ、夕べの団欒(まどい)、汗の週日、たのしい憩い日、
これを今後の呪文とせよ。pp.24-25
昼のあいだは、はたらきなさい。p.35
我慢づよさを実証しなければならぬ者は誰か。大きい行為を
しようとする者、山を登る者、魚を釣る者。p.43
結論ともいうべきものが、次の言葉である。
いきいきとした、天分ゆたかな精神をもった人が、
実際的な意図をもってごく身近なことに力を注ぐ場合こそ、
この世における最もすぐれたものである。p.18
これらの言葉を総合すると、要するに、優れた能力を持った人が、
倦まずたゆまず毎日の務めを果たし、結果的に大事業を
なしとげること、それに最高の価値が置かれているわけである。
鴎外をはじめとする、明治期のエリートたちが、ゲーテの記述に
我が意を得たのは、むべなるかなである。彼らは、新しい国家を
つくる担い手として、日々粉骨砕身していたわけであるから。
しかしこれが現代日本でも通じる教訓かというと、疑問を
感じざるを得ない。「毎日努力して成果を出し続け、大業を
なしとげよ」というのは、現代日本に多いフリーター、ニート、
およびその予備軍の人々の、心の琴線に触れる教えとなり得るか。
それはあまりにも突き放した物言いであり、酷というべきだろう。
「精神力でなんとでもなる」というようなことを無邪気に言い放つ
精神主義は、個々の人間が様々な物理的・心理的負荷を負っている
ことに対する同情を忘れた、強者の言である。
つまりゲーテの語る理想とは、エリートが幸福であった時代の、
特定の場所においてのみ通用するものであり、もともと普遍性がない
ものではないのか。
私がゲーテをいつ読んでも面白く思えなかったのは、この普遍性のなさが
原因だったのではないか。
手塚氏の随筆を読んで、永年の疑問が少し解けたように思った。
いま、人生の指針を見いだせずに悩んでいるあなたに
★★★★★
もともとは講談社現代新書の初期のロングセラーだった。ある事情から絶版になっていた名著の待望の復刊である。おお、思春期に何度も読みかえして励まされた、熱い記憶がよみがえってきたよ。
「ファウスト」「ツァラトゥストラ」「ドゥイノの悲歌」などの不朽の名訳で知られるドイツ文学者の手塚富雄が、文豪ゲーテの知的遺産の精髄を達意の文章でやさしく解き明かした珠玉のエッセー集。これからゲーテの巨峰に挑もうというみなさんには、絶好の手引きとして、まず本書をお勧めしたい。
よくある自己啓発本などとは、まったく格が違う内容の濃さ。いま、人生の指針を見いだせずに苦しみ悩んでいる者に、ゲーテの叡智にきらめく箴言の数々は、きっと、なんらかの啓示をもたらしてくれるはずだ。
いや、別にサンマーク文庫だっていっこうにかまわないけれど、本来ならば、講談社学術文庫から再版されてしかるべき価値のある一冊ではないだろうか。
日本を代表するドイツ文学者が残した名著、ここに復刊!
★★★★★
本書はタイトルで損をしている。題名だけ見ると、薄っぺらな自己啓発本と区別がつかないからだ。しかし、そうではない。
著者の手塚氏は文化功労者にも選ばれた日本を代表する優れたドイツ文学者だった。著者が翻訳したゲーテ作品は、詩的で気品が香る格調高いものが多く、今も定評がある。
本著は、ゲーテを知り尽くした著者が、その普遍的な魅力を広く一般にわかりやすく伝えるために今から40年も前に講談社現代新書から出版した名著である。手塚氏は逝き、さらに新書の大量出版/大量絶版時代の到来によってこの本は一旦絶版となっていた。しかし、復刊サイトなどでの人気は根強く、出版社を変えて文庫本の形で再版された。文句なしに一読を勧める。
「人間は努力する限り迷うものである」。自分の人生はゲーテという巨星の跡をとぼとぼあるくようなものだったという謙虚な著者のゲーテ作品の分析は鋭くて洗練されており、何度読んでも、はっとするものがある。ちっとも難解ではなく、とてもやさしく読めるのだが、深い。ひとつひとつの解説や引用されている言葉はもちろん見事だけれど、全編を貫いているものが何より胸をうつ。本書を一読された方の多くは、その後も時々本書の扉を開くことになるのではないかと思う。
新書版についていた、手塚氏のあとがきが文庫では割愛されているのがちょっと残念だ。また、個人的な希望としては、手塚氏が翻訳した「ゲーテ詩集」も、ぜひ復刊して欲しい。
◆こころが開いている時だけ、この世は美しい。(ゲーテ、格言詩)
★★★★☆
◆こころが開いている時だけ、この世は美しい。(ゲーテ、格言詩)
この言葉からも、ゲーテは私たちが生きるこの世界を美しく見ていたのであろう。
ただ彼も人間であった。
人生に恋に、悩み苦しむ人間でもある。
しかし、常にこころを世界に開こうと常に努めた人であった。
「こころが開いている時だけ、この世は美しい」の言葉には続きがある。
「おまえの心がふさいでいるときには、おまえは何も見ることができなかったのだ」
自分の心が沈み塞がっている状態を良しとしなかったのである。
ゲーテの一つ一つの言葉は、現代の困難な時代に生きる私達を激励し鼓舞してくれる。 今一度、ゲーテの言葉に耳を傾けてみようではないか!
ゲーテは、常に瑞々しい新鮮な心で、現実をありのままに受けとめ、しかも現実におぼれることなく、理想をもってそれに対処した人であった。
現代の複雑で困難な時代の中にあって、自分自身を活かし常ににいきいきと生きるために、このゲーテの言葉に心をひそめるべきであろう。
ゲーテの言葉と通して心の対話を通じて、示唆に満ちた豊かな言葉の泉から、われわれ現代人への自分らしく生きるための知恵を汲み取ることが出来る。
ゲーテの言葉には本当の生き方を求めるものに、今も珠玉の知恵と輝きを放ち生きているだ。
ゲーテ(Goethe)は誰もがご存知だろう!
彼は18世紀ドイツに生まれた詩人であり、文豪であり、政治家であり、科学者であり、彼の生涯を通して様々な方面で才能を発揮した人物である。
特に彼の思想は、今日のドイツ人に多大な影響を与えている。いや全世界の人々に影響を与えているのだ。
現代の複雑な社会の中で多くの人が自分自身を見失い、迷い悩み苦しみ自分自身を活かせずいる。こうした時代にゲーテの思想は多くの示唆を与えてくれる。
ゲーテの全人格的な生き方とは何か? ゲーテの言葉を導き手として、自分の可能性を最大限に活かす生き方を考えてみよう!
スサノヲ(スサノオ)
手塚さんの解説がまた素晴らしいです
★★★★★
ゲーテの言葉を翻訳し、具体的な事例も交えて解説してくれている手塚さんの文章も素晴らしい本です。残念ながら絶版になってしまいました。是非講談社現代新書に復刊してほしいと思います。