前年の面目回復!
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前年の見事な復活劇は歴史的にも大変意義深い出来事であり、
「1965年 カーネギー・ホール ザ・ヒストリック・コンサート」として記録されましたが
その内容は誰しも満足できるものではありませんでした。
翌年に収録されたこの盤では、ホロヴィッツのコンディションは一聴して判るように、
前年とは比較にならないほど絶好調です。
実際には1966年の2日間の公演からの抜粋によって構成されていますが
録音状態も抜群で、当時の優秀なエンジニア達にも感謝してしまいます。
艶やかな音色のハイドンのソナタ、ダイナミックな演出のオーベルマンの谷から最後のトルコ行進曲まで
一聴してホロヴィッツと判る独特の音とタッチで颯爽と弾きあげられています。
後の“Horowitz Rediscovered”では、テクニックの衰えを芸術性でカバーするのが
精いっぱいになりつつあることが聴いてとれるため、
やはり1970年頃までがテクニック的にはピークだったのかもしれません。
私が最も好んでいるホロヴィッツのライヴ盤の一つですが、4月17日に演奏された
ベートーヴェンの“創作主題による32の変奏曲”の音源も是非聴いてみたいです。
絶品!
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今さらホロヴィッツについてあれやこれや語るつもりはないが、このコンサートは全てにおいて肌理細やかな演奏である。これが生で聴けたらどんなによいのだろうか。
耳の快楽
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リストのオーベルマンの谷。強烈ですよ。この演奏のすさまじさ!
・・・人間が欲望や深い悲しみについて心に抱き得るすべてのものを私は感じた。・・・『オーベルマン』
前半の鬱々とした表現の美しいこと・・・弱音の柔らかさ、そして後半狂気の追い込みとの対比の鮮やかさ。
クライマックスで口をぽかんとあけ、それから我に返り
熱狂的に拍手する聴衆を見てニヤリとするホロヴィッツが、そこにいるよう。
実際、演奏の後に聞かれる聴衆の熱狂ぶりには圧倒されます。
ショパンのマズルカ(Op.33No.4)もミケランジェリ、アシュケナージの演奏と聴き比べても
その流麗なリズムが際立ち、構成も見事、どうやったら数分間で
ここまで聴衆を引きこむ世界を作り上げることができるのか。
喜びの島とオーベルマンの谷
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他の曲もホロヴィッツらしい素晴らしい演奏なのですが、中でもオーバーマンの谷と喜びの島、
どちらもフィナーレの大迫力と大胆さにマイってしまいました。
オーバーマンの谷はクラシックに興味を持ち始めの方には少し長めで、前半は退屈するかもしれません、
しかし、慣れてくるとその展開が人間の内側に潜む葛藤を表現しているのに気付きます。
そして壮大なフィナーレへ...。ホロヴィツは大胆にも過激な程テンポをアップさせ一気に高揚させます。
チッコリ-ニやアラウ、ブレンデル...、他の名ピアニストの表現と明らかに一線を画した名演です。
喜びの島は随所にホロビッツ独特のタッチを織り交ぜながら最後のフィナーレへ、この曲も長めの曲ですが、緊張を保ったまま一気にフィナーレへ、ここでホロヴィッツは大胆にもテンポを細切れかつハイテンポにしてしまうのです。この感動と衝撃、彼しか出来ない芸当でしょう。
是非、ブーニン、ロジェ、アシュケナージ等と聴き比べてみて下さい。
何度聴いても厭きることがありません
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「オーベルマンの谷」の演奏を捜していて、たまたまこのディスクを購入したんですが、録音がキレイでびっくりしました。
澄みきった弱音が・・・とおくからツーッと聴こえてくるような・・・。
いままでもっていた、わたしのなかのホロヴィッツのイメージがかわりました。