鶴見さんが紹介する、20世紀の日本の風土記を書く人たち。
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まえがきはたった四行しかなくて、タイトルの意味はここまで読んでもよくわからない。しかし、どんな相手を鶴見さんが対談相手に選んだかを見ていくと、すこし分かってくる。
どの方も、近代の日本を独特の視点で捉えて来た、と鶴見さんが選んだ方たちである。
本書ではしばしば「一つの世界しか知らないことの危うさ、傲慢」とか「すこし外にいるからこそみえてくること」などという表現がみられる。日本を見る場合、日本の中ばかりよく知っていても分からないことがあるし、あまり遠くからみても「客観的」「他人事」のようになってしまう恐れもある。そんなところから、「ちょっと外側」の人たちの視点を鶴見さんは重視しているのだと思う。ご自身も15歳で渡米し、一時期は「日本語より英語の方が」使えると思ったこともあるからこその感覚であろうか。そういうことからすれば、「戦争を知らない」世代、というのもその戦争から「ちょっと外側」の位置でとらえることができるという利点があるともいえるだろう。
鶴見さんも御高齢である。自分と同世代やさらに若い世代が歴史をどう語り継いでいくのか。鶴見さんでなくても、思いをしっかりと受け渡して欲しい、こんな考えもあったと伝えて欲しいと思うのは自然な気持ちではないだろうか。本書は、鶴見さんが自らが生きた時代について考えてきたことを次の時代につないでいく相手を世に紹介する一冊になっている。現代の風土記の書き手、語り手を世につなぐという意味が本書のタイトルにはこめられていると理解した。
会話や対談後の鶴見さんのコメントに、座談相手の方の著書や考え方がとても要領よく紹介されている。これらの方の著書を(少し意見が違う方ならなおさら)一度手にとってみよう、という気持ちにもさせられる。
・・・20世紀の日本の風土記はどんなものになるのだろう。そして21世紀の風土記は・・・。そんな思いを馳せる一冊である。