開高健の生誕から死去までを写真で綴るアルバム。生原稿から「洋酒天国」、親友にあてた書簡、書斎の写真まで豊富な写真で足跡をたどることができる。価格もお手ごろ、ファンには愛蔵の1冊となること間違いない。それにしても60歳を前にした死去はあまりにも惜しい。合掌。

開高健は先輩にあたる。昔母校に講演に来られて、本当は何だか難しい演題がついていたのに、我が母校ということで雑談に終始した、楽しい１時間だった。私は当時彼をよく知らなかったが（同級生の大半も「かいこうけん」と呼んでいたから、似たり寄ったりだったのだろう）、野坂昭如と遊んだ話がとても面白かったことを覚えている。あのアブナイ話を先生方がどんな顔をして聞いていたのか、残念ながら今となってはわからない。
さてこの本は私がじかに見た数少ない作家の追憶を呼び覚ます写真集である。私は後年の「釣り好きの太いおっちゃん」になる前、概ねベトナムで死地を彷徨する前の彼の方が、表情に凄みがあって好きである。