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ヘンリー五世 シェイクスピア全集 〔19〕 白水Uブックス

価格: ¥893
カテゴリ: 新書
ブランド: 白水社
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フランス攻略 ★★★★☆
フランス王位は、正当な権利である、としてフランスを攻めるヘンリー
5世の物語です。
実際のヘンリー5世は、国語というものは国のアイデンティティーの体現
であるとして、英語の使用を奨励し、例えばロンドン市長には英語で手紙
を書きました。そして英語を奨励することで、対フランス戦争に備えて
国民を団結させようとしました。一方で、兄弟とはフランス語で手紙を
やりとりし、妃もフランス人、そして子供にもフランス語で喋ったとい
います。つまり当時、イギリス/フランスは敵対していながら密接な関係
を持っている、という複雑な構図があったのです。
この作品においてヘンリーは、劣勢をものともせず、まるでアーサー王
かのごとき超人的な勝利(フランス軍は万単位で死んだのに、イギリス
軍の死者は数十人しかいない)をあげ、フランス王の娘を娶ります。
フランス語もそのまま書いてあったりするので、フランス語のわかる方
には尚一層面白いかもしれません。
比較的政治色の濃い物語で、ストーリーはそんなに面白いものではあり
ません。が、王が立派に描かれているだけでなく、脇役的人物も描きこ
まれ、王侯貴族だけでなく一般の人々の様子まで目に浮かぶようです。
最後に、あとがきのようにして、その後の話が紹介され、ヘンリー5世
の勝利の余韻も長くはなかったのだという無常観的なエピローグとなって
います。
日本ではあまり知られてない英雄王 ★★★★★
放蕩王子から理想的キリスト教君主へ。このあたりはわが国の織田信長を髣髴させる。また、父祖悲願の対仏戦争に勝利し、若く美しい姫君と結婚。ドラゴンクエストに代表されるファンタジーのようだ。
だが、これは単なる英雄サーガではない。宗教、貴族、王、戦争の欺瞞、王の苦悩、庶民の図太さ、哀れさなどを巧みに描いている。
だが、それはあくまでイングランド側だけのこと。フランス側の描写は平板な「愚かな敵役」にとどまっている(時代の制約といえばそれまでだが)。これはシェイクスピアの史劇(主に百年戦争~ばら戦争を描く作品群)に共通する特徴である。
すばらしい作品である。が、フランス好きな人は読む前に以上のことを心してください。
五幕で描かれたイギリス国歌 ★★★★★
「ヘンリー五世」は<五幕で描かれた国歌>とも呼ばれ、本国イギリスではとても人気があるそうです。内政が不安定なときほど外国に敵をつくって国民の眼をそらせ、という父王の教えに従って(「ヘンリー四世2部」ーーなにやら現代そのままのような政治哲学です)、今や国王となったハルはフランスを攻め、これに勝利します。以上のことからもご想像のとおり、イギリス国民にとって「王の鑑」であるヘンリー五世王を扱ったこの戯曲は大変愛国主義的な作品で、戦時には戦意高揚のためにしばしば政治的プロパガンダとして上演されてきたという経緯があります。それでも1944年、つまり第二次大戦の真っ只中にローレンス・オリヴィエによって映画化された際には、台詞全体の半分以上に削除・訂正が加えられたそうです。内容は一見好戦的なのですが、実際に上演しようとすると戦意高揚にふさわしくない台詞がこんなにも多く含まれていた、という訳です。

もし偏見や思い込みから最も遠い芸術家がいるとしたら、それはシェイクスピアだと思います。マルクスもフロイトもシェイクスピアからたくさん引用しています。一方で多くのキリスト教関係者が、シェイクスピアの作品によって神の言葉を補強できる、と信じているようです。彼の作品はキリスト教的にも反キリスト教的にも読め、そして、いずれの側から発せられる言葉にも大変な説得力があります。私はこんなにスケールの大きな作家を知りません。一つの作品を読んでもそうですが、全作品から与えられる印象となると本当に圧倒的だと感じます。