司馬作品の「メイキング」
★★★★☆
週刊朝日の連載記事をたまたま見かけて、買ってみた。
司馬は取材のために全国各地を訪れ、竜馬や信長が通った道を丹念に歩いて、作品のリアリティを構築していった。本書は、その取材の航跡を追いかけるようにして、司馬作品ゆかりの場所を訪れ、主人公たちの子孫、あるいは司馬が取材をした町の人たちなどを紹介しつつ、司馬がどのように作品を構築していったかを追ったある種のドキュメンタリーである。
本書で取り上げているのは、「燃えよ剣」、「竜馬がゆく」、「国盗り物語」、「巧妙が辻」の4作品。38歳から41歳ごろに同時並行的に執筆された作品群である。このころの作品には瑞々しさと抜けるような明るさとエンターテイメントがあふれていて、筆者はこの時期の司馬がいちばん好きだ。
これら4作のファンの方には、映画でいう「メイキング」を楽しむ感覚で、お勧めできると思う。