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志賀直哉〈下〉 (新潮文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
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不快感の表現を短編小説に昇華した「神様」の半生 ★★★★★
「小説の神様」とも称された稀世の文学者とその時代を、末弟子の深い思いで叙した「私の志賀直哉物語」後編。  
 夏目漱石に勧められて書き始めた「時任謙作」が、父との和解後、主題を変えて、志賀唯一の長編小説「暗夜行路」が発表された。前編は主人公時任謙作の自我形成の苦しみを、後編は大自然との調和の中に心の平和を得て浄化されていく過程を息長く描いている。
 本書は直哉をめぐるさまざまな具体的な「事実」からその人間像に迫ったもので、作品論は意外に少ない。ただ、この「暗夜行路」の構成については詳しく述べられている。漱石鴎外が強い衝撃を受けた明治天皇の崩御、乃木希典大将夫妻の殉死について主人公または作者は何の関心もないらしく、第一次世界大戦に対して全く無関心だった。作者の眼は専ら主人公の内面に向けられていた。妻直子と従兄との過ちで傷ついた心が大山の自然に癒されていく姿を追っている。そして直子も「助かるにしろ、助からぬにしろ、兎に角、自分は此人を離れず、何所までも此人に随いていくのだ」という心境になる。
 昭和46年10月21日午前11時58分、直哉永眠。秋の秋らしくよく晴れた気持ちのいい日であった。花も香典も受けず、祭壇に余分な物一切飾らず、直哉にふさわしい無宗教のすがすがしい葬儀だったという(雅)
小説の神様の人生 ★★★★★
下巻は、志賀直哉の後半の人生を描く。今までベールに包まれていた「暗夜行路」執筆の逸話を惜しみなく書き尽くしている。尊敬する師である志賀直哉の戦時中の、時局に傾斜した「シンガポール陥落」という文章から、戦後に発表して、世間では“老人の世迷いごと”とされてきた「国語問題」など、これまで、志賀文学を愛するが故に研究者たちがさけて通ってきた文章に関して、正面から取り組んでゆく筆者の姿勢には頭が下がる。「白樺派」として名を馳せた志賀と武者小路実篤、里見とん、有島生馬らとの交友も、決して順調ではなく、時には決裂が走ったことさえ、師に肩入れすることなく明かしていく。志賀の人生観を描きつつ、最期のときまで綴られている。最終章の「葬送の記」で記された里見とんの弔辞を読んだときに、思わず涙が流れてしまったのは私だけではないであろう。