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志賀直哉随筆集 (岩波文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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良い目と良い文 ★★★★★
日常にあるごく平凡な事柄も、この作家にかかると、色鮮やかに
眼前に世界が広がる。端的に、的確に眼前の物事を捉え、それを
表現することができることが、志賀直哉のすごいところ。それゆえに
この作家の作品を筆写することが、文筆家へのひとつのプラクティス
となった。細部ではなく、全体を感じたまま頭に残す。それを的確な
言葉で表現する。これほど、難しいことはない。写実の名手、正岡子規
と共通する鋭さが、あるようにも思える。何度でも読み返したい良書。

今読むと、多少「上から目線」っぽい表現もあり、巨匠っぽいところも
ある。
随筆の神様、日本語の神様 ★★★★★
元々、志賀直哉の小説も随筆、日記みたいなものだから、「随筆集」と言っても、小説とそう違うようには感じなかった。しかし、読後、才能の塊とはこういう人を言うのだなあ、と感慨新たにしたものである。冒頭「イヅク川」という作品が出てくる。1ページ余りのそれだが、読んでいると、終盤この話がどうやら夢の中の話だということに気付きだす。しかし、夢とは醒めてしまって時間が経つと、特に何てことの無い夢だと、夢を見た記憶はあるとしても忘れてしまっていて、上手く言語に載らないものだが、それを見事にやっている。そして読者は終わりにかけて、ははア、どうやらこれは夢だな、と気付く感じが、ちょうど夢から覚めかけの頃、誰しも感じるその感じを疑似体験することになる。「沓掛にて」という作品は「芥川龍之介論」になっているが、秀逸のそれで、これを読むとまるで、ついさっき芥川に会ったかのような感じになるほど、本人を良く捉えている。これを読むと評論の「芥川論」は読まなくて良いぐらいの優れものだ。とにかく、なんでもないような話を「作品」にしてしまうこの作家は、やっぱり「神様」だと思う。