松子夫人が語る潤一郎氏への恋慕・追悼
★★★★★
この本は、谷崎潤一郎氏の夫人・松子さんの書いたものです。
本書のほとんどは、潤一郎氏の死後に書かれたものですが、
内容は、潤一郎氏への想いで一杯です。
彼との出会い、彼と京都で過ごし、神戸で過ごし、
熱海で過ごし、花見をし。。。彼の死に至るまで。。。
と、様々な思い出のエピソードを紹介しつつ、
彼の日常の性格・人柄や癖まで語られており、
また、彼への愛情が、この上ない質で、いっぱい書かれています。
谷崎潤一郎氏は「芸術家としての姿勢」を、非常に大切に守る人であるため、
他の男性と比べると、一筋縄に「松子夫人の夫」になりきれない難しい面もあったようですが、
その分、松子夫人は、谷崎氏に愛情をしっかり注いでおられたことが、
じわりじわりと、読者の心に伝わってきます。
潤一郎氏の死について、死後に潤一郎氏を想う気持ちが、とても印象的でした。
また、結婚前の松子夫人に宛てた潤一郎氏の手紙が多く掲載されていることは、
ファンにとっては、「意外な贈り物!」として、かなり満足できます。
谷崎潤一郎氏のファンの方は、やはり「文学的なもの」、
特に「潤一郎氏ならでは」のものを求めると思いますが、
この本には、この本の素晴らしい部分が、たくさんあります。
潤一郎氏のファンに、是非とも読んでいただきたいです。
枝垂桜の咲く頃、法然院にある潤一郎氏と松子夫人のお墓に参りたくなる本です。