読書の醍醐味
★★★★☆
今まで知っていたことが違う風景に見える、このドラスティックな自分の中の変化が読書の醍醐味だ。
海で泳ぐとき、プールとは違う音が聞こえる。パチパチとかピチピチとかの表現の音が聞こえるんだが、これって、底の岩が転がっている音かと思っていた。この本でその正体が分かった。底生動物のテッポウエビの出す音だった。多分、この音は小学校のときから知っていたし、何だろうと思っていた。その疑問がやっと晴れた瞬間だった。
この本を読んで、そうだったのか、そうか自分はこんなことも知らなかったのか、と膝を打つことが多かった。例えば、空中の音はホバークラフトなどの大音量であっても海中にはほとんど届かないこと、水中は空中ほど見通しが良くないため、水生動物にとって音が重要な知覚要素であること。また、魚ではその物理的性質によって内耳と側線と2つの感覚器が発達したこと。浮き袋も音響共鳴や腸に繋がって音の発生に関わっていること、音の伝搬には海底の地形、特に浅瀬が重要な振る舞いをすること、などである。
本書は読みやすいが、論理の展開が分かりやすくはない。それでも、海に生きる生物たちに興味があり、そしてあまり知られていない音の世界に少しでも興味があれば、海の見方が変わることだろう。今まで知っていたことが違う風景に見える、このドラスティックな自分の中の変化が読書の醍醐味なのだから。
海の中にも音の世界が
★★★★☆
海に潜り小さな魚を見ているとピチピチと音が聞こえてきたり、釣り上げた魚と記念写真を撮るときにキュッと鳴いたりと、魚が鳴くのに驚いていましたが、この本を読むと特別の事ではないと分かりました。水中での音の伝わり方にも特徴があるので、台風などは私達が感じるよりもっと前に、水生動物が分かっていたので、釣りにも影響があったのですね。また、「魚は音に臆病で…」と聞いていましたが、意外にも継続的な音には慣れてしまうことには驚きでした。
音響ディバイスの性能が上がるたびに、新たな事が分かってくるようで、今までに感心が注がれていなかった世界(音域など)のコミュニケーションなど、これから面白い発見や研究成果が出てくるのではないかと期待が膨らみました。