従来の「人口増加」を前提とする、一部の時代でしか通用しない経済の把握の仕方に対して、歴史的に見て人口減少期は文化水準が向上した時代であることや、日本における「文化の商品化」に見られるような、「質の経済」の実態を指摘することで、人口減少によって危機が到来しているとする主張に反論している。
こうした内容の主張、特に、必ずしも広く認識されていない日本の潜在的国力については、確かに大いに正鵠を得ていると思われる。すなわち、人口という「量」ではなく、生み出すものの「質」(これは人口量と正比例しない)こそが、富の源泉ということであり、これは当然ながら、「量」を前提とする人口増加経済の発想では到底とらえることはできない。しかし、このことは、著者が他のところ(例えば『「質の経済」が始まった』PHP研究所、二〇〇五年)でも指摘していることであり、さして新規性があるわけではない。
さらに、これは「人口減少危機論」に対する間接的な回答であり、「人口減少」そのものが「プラス」であることを直接に説明したことにはならない。この意味では、「人口減少」という現象を、緻密に解明した松谷明彦の研究(『人口減少社会の設計』など)の先駆性と重要性が改めて明らかになっているといえる。ただ、松谷も、人口減少社会は「質の経済」を前提とすることを指摘している。
いずれにせよ、本書からも、人口減少社会における富の源泉は高度な「質」であり、そしてそれを生み出す「高度人材」こそが重要であり、それを伴わない、例えば団塊の世代のような「低度人材」が、多数存在しても何ら意味をなさない(むしろ社会的コストでしかない)ことは、明白であろう。
いつも驚かされることばかりです。
しかし、この本にはすこし疑問がのこります。
確かに人口が減れば、いい商品を獲得できるチャンスが増えるので、文化的なレベルが向上するという一文は納得できます。
しかし、世界的なレベルで~~考えると、中国の富裕層は増えてきています。
また、世界人口も着実に増えてきています。
日本の人口が減っていても、世界の人口増がそれを上回っています。
また、インターネットも発達していない時代、閉鎖的であった時代(ルネッサンス期)の事例を参考にしても意味がないと思われます。
それらのことから、今回の本はあまり良い本とは思えません~~。
残念ですけれど。
次の作品に期待します。~