現役臨床医、経営改革を実践している者として、和欧米の数多くの法律、財務関連書籍を購入してきた。日本における医療事業再構築の難しさは、大きく(1)制度上の難しさ、(2)組織としての難しさ、そして何よりも(3)医療従事者のメンタリティの理解の難しさに尽きる。本書は、この根底を十二分に把握した上で実践されたマネジメントをわかりやすくまとめたものである。医療業界におけるマネジメントを実践される方の入門書として最適と考える。

従来、「病院経営」というと病院の現場の事務長が書くものか学者が書くものばかりだった。本書は実際に再生に関わっている著者が個別の施策の議論に終始せず、あくまでも経営者としての戦略フレームワークの分析に注目した点が非常に斬新。ともすれば医師会の批判にさらされかねない「病院Ｍ＆Ａ」や「株式会社の病院経営」「損益の考え方」まで言及しており、ここまで触れた書はかつてなかった。欲を言えば実際の再生ケースも取り上げていただければありがたかった。