日本的なるものの美しさ
★★★★☆
クラシック音楽という西洋の音楽を学び、継承した日本人作曲家にとって、唯一無二となるアイデンティティを日本的なるものに見出したのは理解できますし、世界へ発信できる存在の音楽を創り出すのに伝統的な日本のメロディの借用もまた当然でしょう。
武満徹の「ノヴェンバー・ステップス‐琵琶,尺八,オーケストラのための」は、その名声ほど演奏されないのは、難解だという点と奏者の問題だと思います。この録音では、初演以来、世界で演奏してきた琵琶奏者の鶴田錦史と尺八の名手横山勝也の2人ですから、この曲の演奏にはなくてはならない2人です。武満徹の静寂、そして「間」、西洋の手法とは真逆な手法が今も新鮮です。
黛敏朗のバレエ音楽「舞楽」もまた笙、篳篥、龍笛、鼓という雅楽の世界をオーケストラで再生したものです。西洋の記譜では表せない複雑な音程が駆使され、「日本的なる音楽」の追求した成果がここに表れています。好みがあるでしょうが、独特の音楽世界は他にありません。
小山清茂「管弦楽のための木挽歌」は、日本的な旋律や民謡のエッセンスを違和感なくオーケストラに取り入れた楽曲ですし、成功した作品だと思います。日本のお囃子である笛、太鼓がそのまま取り入れてあり、加工し、西洋音楽との融合を果たしています。
外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」は、日本のオーケストラが海外で演奏旅行をする時のレパートリーとして有名です。血沸き肉踊るようなエキサイティングな音楽が次から次へと繰り出されます。日本の音楽の陰陽の内、陽の側面を強調した楽曲です。
若杉弘と東京都交響楽団、岩城宏之とNHK交響楽団、尾高忠明と読売日本交響楽団による演奏です。どれも素晴らしい演奏だと思いました。